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ズールー語が開く世界 別巻27

南アフリカのことばと社会

ズールー語が開く世界

いかにしてズールー語学習はアパルトヘイトに組み込まれたか? 学習経験、日常の対話での気づき、文学や歴史まで、エピソード満載!

著者 上林 朋広
ジャンル 人類学
歴史・考古・言語
文学・言語
シリーズ ブックレット《アジアを学ぼう》 > ブックレット〈アジアを学ぼう〉別巻
出版年月日 2022/10/25
ISBN 9784894898134
判型・ページ数 A5・68ページ
定価 本体800円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに
 1  ズールー語を学んでなにか良いことはあるのか?
 2 ズールー語を学ぶ人について知ってなにか良いことがあるのか?

一 ズールー語学習という経験
 1 ズールー語学習者の一日
 2 ズールー語で挨拶する

二 植民地化とズールー語
 1 宣教とズールー語学習教材の出版
 2 アフリカ人統治行政と白人のズールー語話者
 3 スチュアートの歴史教科書

三 民族語としてのズールー語
 1 ニャンベジの苦闘
 2 ニャンベジの達成
 3 なぜこんなにも拍手が多いのだろうか?

 ◆コラム――正しいズールー語とファナカロ

おわりに
 1 移民排斥
 2 変わりゆくズールー語

注・参考資料・文献
あとがき

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内容説明

言語と植民地主義の複雑な関係!
いかにしてズールー語学習はアパルトヘイトに組み込まれていったのか。
留学を機に著者がはまってしまった設問だ。
学習経験から日常の対話での気づき、そして文学や歴史まで、ズールー語を取り巻くエピソード満載の入門書。

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      はじめに より




 本書のテーマは南アフリカにおけるズールー語学習の歴史である。
この一文を書いた途端に、本屋でこの本を手に取ったあなたが(万が一そういう人がいるとして)、すぐに閉じて棚に戻すのが思い浮かぶ。日本では、ズールー語は馴染みのない言語だ。ズールー語の文法や会話を日本語で解説した参考書はない。一体どんな言葉だろうかと興味を持って本書を開いたとしても、わざわざ時間をかけて読もうとは思わないかもしれない。

 しかし、日本においてはとてもマイナーな言語であるズールー語に日本で出会える場所がある。ディズニーの映画、そして劇団四季がミュージカルとして上演している『ライオンキング』のはじまりの歌「サークル・オブ・ライフ」の冒頭の歌詞である。「ナンチ・インゴンヤマ、ここにライオンがいる」から始まる、力強い歌詞だ。

・・・・・・・・・

 ズールー語作家には例えばプルーストのような世界的に読まれる文学者はいない(アメリカの小説家のソール・ベローは、多文化主義を批判する文脈でズールー人にプルーストのような優れた書き手はいないだろうと発言した)、またビジネスで不可欠な訳でもない。

 本書は、ズールー語学習の歴史を辿り、実際的な利点は皆無であるはずなのに、なぜ人々はズールー語という言語を学んできたのか、あるいは学ばされてきたのかという問いに答える。この問いは、アパルトヘイトという人種差別の歴史とその克服を目指す南アフリカの歴史と分かちがたく結びついている。本書は多くの人々が英語を話す国、南アフリカにおけるアフリカ言語の学習という事例から、言語と植民地主義という大きなテーマに新しい光を当てることを目指している。五ミリ程度という本書の厚さを考えれば、照らし出される範囲は狭いかもしれない。それでも、ズールー語が照らし出す歴史と社会状況は、英語だけでは見えてこない新鮮な像であるように思う。この点についてもう少し説明を加えよう。まずはズールー語を学んでなにか良いことがあるのか考えてみたい。そして本書の主題である、ズールー語を学ぶ人について知ってなにか良いことがあるのかという問いを続けて考えてみよう。


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著者紹介
上林 朋広(かんばやし ともひろ)
1986年、東京都生まれ。
一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士課程修了。博士(社会学)。
一橋大学大学院社会学研究科特任講師(ジュニア・フェロー)を経て、現在日本学術振興会特別研究員CPD。
主要論文に、「ズールー・ナショナリズムにおける「曖昧さ」の縮減──1930・40年代のズールー語教科書出版における白人行政官と保守的ズールー知識人の協調」『一橋社会科学 』13巻(2021年)117-144 頁がある。

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