歴史や背景を語り、お薦めの厳選12作品を解説。韓国語学習、「多読」への応用、奥深い生活文化へのアプローチまで、情報満載。
著者 | 立川 真理恵 著 |
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ジャンル | 文学・言語 |
シリーズ | ブックレット《アジアを学ぼう》 |
出版年月日 | 2024/10/20 |
ISBN | 9784894898196 |
判型・ページ数 | A5・80ページ |
定価 | 本体800円+税 |
在庫 | 在庫あり |
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目次
一 韓国絵本を読むことの意義とは
二 韓国絵本の歴史
コラム1 韓国語の表記と発音(超入門編)
コラム2 日本の絵本の歩み
三 絵本から学べること
――韓国語学習と絵本
四 さらなる学びのために
――テーマ別作品紹介
おわりに
注
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参照文献
付表 本書で取り上げた絵本の原作・邦訳リスト
あとがき
内容説明
もうひとつの韓流、絵本の魅力を探る
近年、国際的な受賞が相次ぎ、邦訳も増えている韓国絵本。その歴史や背景を語り、お薦めの厳選12作品を解説。さらに韓国語学習や「多読」といった応用編から、奥深い生活文化へのアプローチまで。情報満載の初の概説書。
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はじめに より
本書を手に取った読者は、「韓国」という言葉を聞いてまず何を思い浮かべるだろうか。
恐らくアンケートをとると、K─POPや韓流ドラマといったサブカルチャーが上位三位以内にランクインするだろう。他には、ファッションや美容、グルメなども上位に入ってくると思われる。また、昨今の厳しい国際情勢から南北問題や日韓関係という言葉を思い浮かべる人もいるかもしれない。
筆者はといえば、近年のK(韓国)文学ブームとともに韓国の児童書、とりわけ絵本が脚光を浴びていることだ。特に、二〇二二年と二〇二三年に韓国絵本をテーマとした大きな展覧会が二つ開催されたことに注目している。
一つ目は、二〇二二年一一月~一二月に千葉市美術館で開催された「ブラチスラバ世界絵本原画展 絵本でひらくアジアの扉──日本と韓国のいま」。ブラチスラバ世界絵本原画展(BIB)とは、スロバキア共和国の首都で二年ごとに開催される、世界最大規模の絵本原画コンクールである。千葉市美術館では、現地で開催された第二八回原画展(二〇二一年一〇月から翌年二月)の中から、近年活躍が目覚ましいアジア諸国、特に日韓の作品が原画とともに紹介された。
二つ目は、二〇二三年一一月から一二月に横須賀美術館で開催された「となりの国の絵本──躍動する韓国イラストレーションの世界」。本展覧会では、現代韓国絵本を代表する九人の作家の作品が展示された。筆者も観覧に赴いたのだが、平日であるにもかかわらず多くの入館者で賑わっており、韓国絵本に対する関心の高さがうかがええた。
他にも、キム・サングン作『星をつるよる』(パイ インターナショナル、二〇二三、㉙)が「第一六回MOE絵本屋さん大賞二〇二三」で五位に選ばれるなど、ここ二、三年で日本国内における韓国絵本の注目度は飛躍的に上昇していることを実感している。
二〇〇〇年代初頭の『冬のソナタ』ブーム、二〇一〇年前後から始まったK─POPブームを経て、日本における韓流は一つの文化コンテンツとして浸透した。特に近年は、韓国の芸能界の世界進出も目覚ましく、その勢いには目を見張るものがある。このような流れの中に、ゆくゆくは絵本も組み込まれて欲しい、というのが本書の執筆の動機である。
筆者は、二〇二二年二月~二〇二三年一月の韓国留学(延世大学校大学院)を通して絵本研究の道に踏み込むに至ったのだが、韓国絵本の魅力と時代背景に触れながら、言語や文化教育において絵本が果たしうる役割について考えていきたいと思う。
読者の中には、外国語で書かれた絵本や児童書を読んだことがある人もいるだろう。たとえば、『星の王子さま』『スイミー』『はらぺこあおむし』の英語版や対訳は、書店の洋書や語学学習書の棚でよく目にするが、こうした絵入りの読み物は、英語の教材としても人気が高い。では、韓国の絵本作品はどうだろうか。「韓国語で絵本を読む」という講座を目にしたら、どのような印象を受けるだろうか。近年の絵本ブームを考えると「絵本」という題材にひかれてやってくる学生もいるかもしれない。日本の絵本には見られない独特のデザインや色づかいなど、絵や装丁への興味から参加する学生もいるだろう。また、韓国語を学び始めて間もない学生が、簡単な文章に触れて語学力を伸ばそうと受講するケースも考えられる。
一方で、そもそも外国語教育に絵本を用いること自体に懐疑的な見方をする人も少なくない。最初に直面するのはやはり費用の問題だろう。絵本は紙だからこそ本領を発揮する仕掛けや表現技法が多いため一冊の単価が比較的高いし、電子書籍化されていない作品も多い。授業で提示する箇所を画像化してモニターに映し出すという方法は便利だが、著作権の問題がある。
いずれにせよ、本書は韓国絵本の教育的価値に焦点を置いているため、こうした問題はいったん横に置くことにし、次節では、筆者がこれまでに投げかけられた疑問に答える形で、韓国絵本を読むことの意義を整理していく。
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著者紹介
立川 真理恵(たちかわ まりえ)
1994年、愛媛県生まれ。
東京大学人文社会系研究科韓国朝鮮文化研究専攻(言語社会)博士後期課程在籍中。
現在、明星大学非常勤講師。
主な論文に「現代朝鮮語‘번지다’の多義分析―「意味ネットワーク」のモデルに基づいて」(『朝鮮語研究』第9号)、「韓国絵本における語彙の分布とテキストの難易度に関する基礎研究」(『朝鮮語教育―理論と実践』第19号)、「詩と絵の出会いがもたらす新たな効果に関する一考察―詩絵本を用いた韓国語・韓国文学教育のために」(『絵本学』第26号)などがある。