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アンティオキアのイグナチオ

七つの手紙とその足跡

アンティオキアのイグナチオ

2世紀初頭、ローマで殉教したシリア初代教会の教父イグナチオの書簡集。成立期の教会や教説を知る基本文献。解説・補注付き。

著者 コルベジエ,A. 編訳
渡辺 高明 編訳
ジャンル 民俗・宗教・文学
シリーズ アジア・グローバル文化双書
出版年月日 1994/05/30
ISBN 9784938718145
判型・ページ数 4-6・234ページ
定価 本体2,500円+税
在庫 品切れ・重版未定
 

目次

まえがき

アンティオキアのイグナチオ──その足跡

  一 アンティオキアのイグナチオ 
  二 イグナチオの時代の教会 
  三 イグナチオの七つの手紙 

アンティオキアのイグナチオ──七つの手紙

  一 エフェソ教会への手紙(解題 愛のシンフォニー)
  二 マグネシア教会への手紙(解題 限りなく崇高な名は)
  三 トラレス教会への手紙
          (解題 十字架に磔にされ、復活されたキリストを信じて)
  四 ローマ教会への手紙(解題 神さまの小麦)
  五 フィラデルフィア教会への手紙(解題 わたしの大事な古文書)
  六 スミルナ教会への手紙(解題 福音の教えから逸脱することなしに)
  七 ポリカルポ司教への手紙(解題 競技者に倣って)

イグナチオによって描かれたキリスト信者像

参考文献/年表/索引(人名・事項)

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内容説明

2世紀初頭、ローマで殉教した、シリア初代教会の教父イグナチオの書簡集。殉教への憧れや恐れ、異端への怒りを吐露し、「受難」「復活」への思索を示すなど、キリスト教成立期の教会や教説を知る基本文献。詳細な解説・補注付き。


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まえがき A・コルベジエ


本書は初代教会の教父でシリア、アンティオキアの司教を務めたイグナチオの七通の書簡の全訳である。


イグナチオは、ローマ皇帝トラヤヌスの治下に迫害を受け、その信仰のゆえに野獣による死刑を宣告され、小アジアを通ってローマへと連行された。その途次、諸教会が示した諸々の厚意に感謝の意を表するとともに、信仰と教会内の秩序を勧めるために、スミルナからエフェソ、マグネシア、トラレス、ローマの各教会の人々に、またトロアスからフィラデルフィア、スミルナ教会の人々、およびその司教ポリカルポに書簡を寄せたわけであるが、これらの書簡は、初代教会の世界を知る上で、「新約聖書」と並ぶ重要な文献の一つとされている。


ギリシア語でしたためられたこれらの書簡は、これまでわが国でも二種類の翻訳書(八木誠一氏訳『イグナティオスの手紙』、およびG・ネラン師・川添利秋氏共訳『アンチオケのイグナチオ書簡』)が発行され、世に紹介されてきたわけであるが、文学的香りも高く、初代教会の世界がいかなる風潮の下に置かれていたかを知る上で極めて貴重な文献の一つとされているので、今ここに、一人でも多くの読者の目に触れることを切望し、再び訳出を試みた次第である。


こうした切なる思いにかられて翻訳の仕事にとりかかって以来、早くも十年近くの歳月が流れてしまった。この間、われわれはT・カムロの編集によるギリシア語の原典(Ignace d'Antioche-Lettres)を中心に、カムロその人によるフランス語訳と八木誠一氏による日本語訳を参照しながら、疑問点に関しては何度となく討議を重ね、原文の細かなニュアンスに留意しつつ、出来るだけ平易な日本語にすることを念頭に、仕事を進めてきた。


解説文はA・コルベジエの手によって作成されたものであるが、以下の目次を一通りご覧いただければ分かるように、一般の翻訳書に見られるごとく、訳文と解説文とをはっきり二つに分けて、訳文を中心にしてその後に解説文をつけ加えるような形はとらずに、全体が十一章からなる、イグナチオに関する書き下ろし文のような体裁をとることにした。すなわち、最初の三章でイグナチオの足跡に関する解説を加えた上で、続く七章で書簡そのものの解説文と翻訳文を呈示し、最後に「イグナチオの描くキリスト信者像」と題する一章を加えて、全体の総括的解説を試みた次第である。


こうした形をとれば、まず読者は、当時の諸教会の雰囲気と時代背景がどのようなものであり、その中でイグナチオその人がどう生きたかを容易に頭に思い浮かべることが出来るようになり、その上で自然に、その人によってしたためられた書簡そのものをより深く味読することが出来るようになるのではないか、と考えたからである。また、書簡そのものに関しては、必要に応じて訳注を付し、要点の把握を容易ならしめることが出来ればと思って、要所要所に、その部分の内容を要約する「小見出し」を付した。訳者の意のあるところをおくみとりいただければ幸いである。


なお、本書の作成にあたり参考にした文献の主なものについては、その表題を巻末につけ加えておくことにした。また、挿絵を入れるにあたりご協力たまわった平照子さん、本書の刊行に理解を示され、風響社にご推挽の労を取られた田中貞夫氏(創価大学教授)に厚く御礼申し上げたい。


出版にあたっては、風響社の石井雅氏にいろいろお世話になった。ここに記して心から感謝申し上げたい。

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編訳者紹介
アルベール・コルベジエ(Alvert Corvaisier)
1921年、フランス・フージェール生まれ。パリ外国宣教会司祭。レンヌ神学校、パリ・カトリック学院に学ぶ。
1951年来日。1953年以降、埼玉県で宣教。川口、浦和、秩父、上福岡等のカトリック教会司祭を歴任。
主な著書に、『神は人々と共に』(中央出版社)、『福音シリーズ(1)(2)(3)』(オリエンス宗教研究所)、『火の種蒔き──1884年秩父事件』(あかし書房)、『うれしい便り』[バイブル・クラス・シリーズ全6巻](あかし書房)。
渡辺高明(わたなべ たかあき)
1931年、福島県白河市生まれ。
1961年、東北大学大学院博士課程修了。仏語・仏文学専攻。
現在、埼玉大学教授。
主な著訳書に、『フランス語ことわざ辞典』(共編、白水社)、『フランス女性の歴史(3)──革命下の女性たち』(アラン・ドゥ・コー著、大修館書店)。

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