目次
まえがき(Preface)
ボルジギン・フスレ (Husel Borjigin)
挨拶(Welcome Address)
Kh. バトトルガ (Kh. Batulga)
城所卓雄 (Kidokoro Takuo)
B. エンフトゥブシン (B. Enkhtuvshin)
今西淳子 (Imanishi Junko)
基調報告(Keynote Speech)
1. トルファン収集品におけるモンゴル語仏教文献の学術的価値について
(Турфаны цуглуулгын монгол бичгийн дурсгалын эрдэм шинжилгээний үнэ цэн)
D. ツェレンソドノム (D. Tserensodnom)
2. ユーラシア人としてのモンゴル諸族
(Mongol Speaking Peoples as Eurasians)
田中克彦 (Tanaka Katsuhiko)
3. 中国におけるモンゴル叙事詩研究
(Хятад улс дахь Монгол туулийн судалгаа)
チョイラルジャブ (Choiraljav)
4. モンゴル国皇帝ボグド・ジェプツンダムバ・ホトクトの日本国天皇あて書簡とその追跡
(Монгол улсын эзэн хаан VIII Богд Жавзандамба хутагтаас Япон улсын Цог жавхлант эрхэ мсэг эзэн хаанд илгээсэн захидал, түүний мөрөөр мөшгихуй)
O. バトサイハン (O. Batsaikhan)
5. ロシア連邦ブリヤート共和国、中華人民共和国内モンゴル自治区、モンゴル国の生活水準のいくつかの変化(1990~2010年)
(ОХУ-ын Буриад улс, БНХАУ-ын ӨМӨЗО, Монгол улсын хүн амын амьдралын тувшинд гарсан зарим ээрчлэлт[1990-2010 он])
V. グライヴォロンスキー (V. Grayvoronskiy)
6. 日本のモンゴル研究の100年
(Хятад улсын Монгол туулийн судалгаа)
二木博史 (Futaki Hiroshi)
7. 中国ナショナリズムにとってのモンゴル
(The Chinese Modern Nationalism and Mongol)
村田雄二郎 (MURATA Yujiro)
大会報告(Plenary Session)
1. 清帝国の崩壊とモンゴル独立の再確立
(Collapse of the Qing Empire and Reestablishment of the Independence of Mongolia)
セルギウス・L・クズミン (Sergius L. Kuzmin)
2. ビント・ワンのフレー滞在:努力と死
(Бинт Вангийн Хүрээ дэх амьдрал: зүтгэл ба үхэл)
S. チョローン (S. Chuluun)
3. ボグド・ハーン政権の歴史的重要性―モンゴルにおける二つの「革命」―
(Богд хаант засгийн газрын түүхэн ач холбогдол: Монгол дахь хоёр “Хувьсгал”)
橘 誠 (Tachibana Makoto)
4. オイラド・モンゴル自治国建国思想とÖ. バドラハ、Z. シジェー、コミンテルンの立場
(Ойрад Монголын автономи байгуулах үзэл санаа ба Ө. Бадрах, З.Шижээ болон Коминтерний байр суурь)
D. シュルフー& G. アリオンボルド (D. Shurkhuu & G. Ariunbold)
5. モンゴル駐在コミンテルン代表T. ルィスクロフの活動について
(Монгол дах Коминтерний төлөөлөгч Т. Рыскуловын үйл ажиллагааны тухай)
青木雅浩 (Aoki Masahiro)
6. 1912年のホブド解放におけるホブド地方の貴族たちの役割について
(1912 онд Ховдыг чөлөөлөхөд Ховдын хязгаарын ноёдын үзүүлсэн нөлөөний асуудалд)
Na. スフバートル (Na. Sukhbaatar)
7. 景観に刻まれた歴史――20世紀初めのアルタイ・オリアンハイ左翼副都統旗の地図について
(Хуучин газрын зурагт тэмдэглэгдсэн газар усыг хөөн шинжилсэн нь)
M. ガンボルド& 上村明 (M. Ganbold & Kamimura Akira)
8. 左翼年間(1929-32年)における少数派エスニック集団の運命
(Зүүнтний он жилүүдэд [1929-32]: бага ястны хувь заяа)
Ch. ボルドバータル (Ch. Boldbaatar)
9. 1945-49年にモンゴルに移住した内モンゴル人
(Өвөр монголчууд 1945-49 онуудад Бүгд Найрамдах Монгол Ард Улсад нүүн Ард Улсад нүүн суурьшсан талаарх судалгаа)
ボルジギン・フスレ(Husel Borjigin)
10. 1930~40年代における内モンゴルの音楽について
(ХХ зууны 30-40-өөд оны Өвөр Монгол орны монгол дуу хөгжим)
包 美栄 (Bao Meirong)
11. モンゴル民族の言語と方言
(Монгол туургатны хэл, аялгуу)
E. プレブジャブ (E. Purevjav)
12. オイラト・カルムィク族の歴史と文化と言語
(History, Culture and Language of the Oirat-Kalmyks)
アイサ・ビトゥキーヴァ (Aisa Bitkeeva)
13. 20世紀モンゴル諸族における文字改革
(ХХ зуун дахь Монгол туургатны бичгийн өөрчлөлтийн тухай)
荒井幸康 (Arai Yukiyasu)
14. モンゴル国の外交理念
(Mongolian Foreign Policy: throughout the end of 20th Century and beginning of the New Century)
J. バヤサフ (J. Bayasakh)
15. 1960年代のモンゴルをめぐる中ソの対抗関係の影
(Shadow of Sino-Soviet Rivalry over Mongolia in the 1960s)
シャラド K. ソニ(Sharad K. Soni)
16. 韓国における非熟練外国人労働者子女の教育機会 ――在韓モンゴル籍の子どもの就学と不就学
(Монгол Улсаас Өмнөд солонгос Улсад амьдарч байгаа хүүхдүүдийн суралцах боломж)
崔佳英 (Choi Ga Young)
17. 『草原啓示録』における20世紀のモンゴル民族表象
(“Тал нутагт оюуны мэлмий нээгдсэн тэмдэглэл” номонд дүрслэгдсэн
ХХ зууны монгол угсаатны дүр төрх)
高 明潔 (Gao Mingjie)
18. 戦後日本人のモンゴル像――地政学的関心から文学的表象へ
(The Mongol Image of Japanese in Post WW2 : S From Geopolitical Interest to Literary presentation)
馬場公彦 (Baba Kimihiko)
19. モンゴル人・ジェノサイドと中国文化大革命
(A Genocidal campaign in Southern Mongolia During the Chinese Cultural Revolution)
楊海英 (Yang Haiying)
内容説明
モンゴルが清朝から独立して100周年を期して行われたシンポジウムの成果。国境をまたぐモンゴル諸民族がどのようなプロセスを経て現在の状況に至ったのかなど、様々な議論の23論文を収録。日・英・蒙の多言語版で提示した貴重な論集。
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2011年ウランバートル国際シンポジウムをおえて ボルジギン・フスレ(Husel Borjigin)
2011年はモンゴルが清朝から独立して百周年になり、それを記念して、モンゴルではさまざまな記念行事、シンポジウムが企画・実施された。国際モンゴル学会(IAMS)主催の「モンゴル独立百周年記念、第10回国際モンゴル学者会議」直後の8月16、17日の2日間、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)がモンゴル科学アカデミー国際研究所と共催した第4回ウランバートル国際シンポジウム「20世紀におけるモンゴル諸族の歴史と文化」がウランバートルで開催された。同シンポジウムは、在モンゴル日本大使館、モンゴル科学アカデミー、同アカデミー歴史研究所、モンゴル・日本人材開発センター、モンゴルの歴史と文化研究会、NGO団体「離散しているモンゴル人研究機構Tasam」の後援、三菱商事、鹿島建設、Genco Tour Bureau Company, Electronmon Trading,モンゴル国立テレビ局、『ニースレル・タイムズ』新聞社、守屋留学生交流協会、「モンゴルの花」社の協賛であった。
SGRAのモンゴル・プロジェクトは、2007年に企画され、2008年に正式にはじまり、2011年は4年目に入った。私どもは、モンゴル独立百周年にあたって、なんらかの貢献ができればと考え、2010年秋から企画、準備し、同シンポジウムを開催することにいたった。
本シンポジウムは、中央アジア、北東アジア社会の複雑な歴史状況を視野に入れながら、新たに発見された文書資料や、記録されたオーラル・ヒストリーなどに基づいて、国境をまたぐモンゴル諸民族がどのようなプロセスを経て現在の状況にいたったのか、近代化への道をあゆんだモンゴル人は何を模索し、どのように激動の時代を乗り越えてきたのか、モンゴルを通じて何がみえるかを検討し、その経験や教訓、遺産に、広い視野から、とりわけ歴史と文化の両面からアプローチし、特色ある議論を展開することを目的としたものであった。
若手研究者に、研究成果の発表する場を提供するという趣旨もあったため、今回のシンポジウムは、若手研究者の発表枠をふやした。2日間の会議に、モンゴル、日本、中国、ロシア、韓国、インドなどの国の研究者約100人あまりが参加し、28本の論文が発表された。
シンポジウムでは、モンゴル独立百周年を念頭において、新しい資料や方法をもちいて、ボグド・ハーン政権に対するひろい視野への関心を示した発表が多かった。また、モンゴルの独立にともなう内モンゴルの動向が、今回のシンポジウムで注目されるテーマのひとつとなった。それと同時に、20世紀におけるモンゴル諸民族の言語、文化、教育についての発表もすくなくなかった。さらに、冷戦時代におけるモンゴル国の対外関係、とりわけ民主化以降のモンゴルの外交政策のいくつかの点に注意をはらった発表は、今日のモンゴル外交のありかたを多角的に理解するのに有益であったといえよう。
本論文集には、その内の23本を収録した。各執筆者は角度や分野がことなっても、今回のシンポジウムの趣旨になんとか答えようとこころみたと思う。モンゴル語と英語で書かれた論文は日本語に翻訳し、日本語で書かれた論文はモンゴル語に翻訳した。なお、2010年9月におこなわれた第3回ウランバートル国際シンポジウム「日本・モンゴルの過去と現在――20世紀を中心に」で発表された村田雄二郎氏、楊海英氏、馬場公彦氏の論文は、本論文集の趣旨にあい、また、内容としても非常に重要であるため、本論文集にも収録することにした。モンゴル科学アカデミー国際研究所が2011年にウランバートルで出版した『モンゴルと日本――過去と現在:2010年ウランバートル国際シンポジウム論文集』(モンゴル語)には、上記の3氏のモンゴル語の論文が収録されているので、今回、この3本の論文のモンゴル語訳は収録していない。
本論文集は、各執筆者の流儀にしたがったため、表記の不統一など問題点がおおくあるが、ご容赦いただければ幸いである。
(後略)