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ポスト社会主義以後のスラヴ・ユーラシア世界

比較民族誌的研究

ポスト社会主義以後のスラヴ・ユーラシア世界

社会主義以前からポスト社会主義以後の多様な時間軸が交錯する現代史を、フィールドからたどり、視座を検証する。貴重な人類学的試み

著者 佐々木 史郎
渡邊 日日
ジャンル 人類学
シリーズ 人類学集刊
出版年月日 2016/03/30
ISBN 9784894892262
判型・ページ数 A5・288ページ
定価 本体4,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序論 ポスト社会主義以後という状況と人類学的視座(渡邊日日・佐々木史郎)

1 ポスト社会主義研究は「幽霊」か
   2 ポスト社会主義以後という問い
   3 ポスト社会主義人類学の反省
   4 ポスト植民地主義論との関連
   5 本書の構成
   6 結語に代えて
   
社会主義へのノスタルジーの背後
   ──スロヴァキア村落部における「革命」の記憶とデモクラシーを実践する試み(神原ゆうこ)
   
   序――体制転換後の社会における記憶
   1 チェコスロヴァキアの「革命」とJ村の「革命」
   2 亀裂の記憶
   3 デモクラシーの試みとノスタルジーの共存
   
教育の現代化と地域主義
   ──民俗音楽におけるモスクワの2つの事例から(柚木かおり)
   
   はじめに
   1 2004年の事例と考察
   2 2010年の事例と考察
   おわりに
   
ロシア正教古儀式派教会の展開に見る「伝統」の利用
   ──ロシア連邦ブリヤート共和国におけるセメイスキーの事例より(伊賀上菜穂)
   
   はじめに
   1 古儀式派のタイポロジー
   2 セメイスキーの信仰状況
   3 容僧派(ノヴォジプコフ派)教会とセメイスキー
   おわりに
   
イスラームと民族的伝統の布置
   ──社会主義を経たカザフスタンの事例から(藤本透子)
   
   はじめに
   1 イスラームの歴史的記憶
   2 ナショナリズムのもとでのイスラーム政策
   3 村落社会におけるイスラームの展開――伝統をめぐる3つの立場
   おわりに
   
   社会主義とイスラームの狭間で
   ──ポスト社会主義後ウズベキスタンにおける豚の流通をめぐる調査報告(今堀恵美)
   
   はじめに
   1 タシュケントにおける食肉用動物および精肉販売にみられる特徴
   2 豚に携わるムスリム
   3 ポスト社会主義後の意識変化――肉加工食品の変遷
   おわりに
   
モンゴル国遠隔地草原におけるポスト・ポスト社会主義的牧畜(尾崎孝宏)

   はじめに
   1 郊外と遠隔地
   2 ポスト・ポスト社会主義
   3 オンゴン郡について
   4 牧民の集団構成
   5 1998〜2001年の変化
   6 2001〜2008年の変化
   7 家畜頭数の変化
   8 考察
   おわりに
   
年金と自然に生きる村ウリカ・ナツィオナーリノエ
   ──ポスト社会主義以後の時代の極東ロシアの先住民族社会(佐々木史郎)
   
   はじめに
   1 研究対象と視野
   2 村の立地と住民構成
   3 村の歴史と住民の履歴
   4 ポスト社会主義時代とその後を生きる先住民村落――比較考察
   おわりに
   
中国村落社会における墓と祖先祭祀の変遷
   ──ポスト改革開放期における共産党の政策と人々のいとなみを中心に(川口幸大)
   
   はじめに
   1 祖先を祀るということの来歴
   2 ポスト改革開放期の村落社会と清明節
   3 現代中国における清明節の祖先祭祀
   おわりに
   
あとがき(佐々木史郎)

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内容説明

混沌たる21世紀の時間軸を探る
多様な時間軸が交錯する現代史。「社会主義以前からポスト社会主義以後」にいたる変転はまぎれもなく大きな軸の一つである。先祖返りや逸脱・硬直・進化までさまざまな現象は、いずれも現実である。変転する社会と視座を検証する、貴重な人類学的試み。

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あとがき(佐々木史郎)より

 

 本論集は2008年10月から2012年3月まで3年半にわたって実施した国立民族学博物館共同研究「ポスト社会主義以後の社会変容─比較民族誌的研究」(代表者:佐々木史郎)の研究成果の一部である。ここには共同研究で中心的な役割を果たした9人の研究者が寄稿した、調査データとその分析からなるオリジナルの論文が収録されている。この共同研究の当初の目的は、次の通りであった。

 1991年のソ連崩壊後の旧ソ連、東欧、モンゴルの状況は、一様に「ポスト社会主義的」と呼ばれた。しかし実は、社会主義体制放棄後の歩みは国や地域によって異なっており、その社会や文化もそれぞれ独自の変化の道を歩んでいた。それは2000年代になると顕著になってきており、いまや「ポスト社会主義的」状況として一つの地域的な枠組みでくくるのが難しくなってきている。しかし、それでもなお各国はかつての社会主義時代の残像を残しており、共通の視点、視野をもってその社会動向を分析することも可能である。本研究会では、「ポスト社会主義的」といわれてきたこれらの国や地域に暮らす人々の生活現場における変化に焦点を当てながら、「ポスト社会主義」後(あるいは「ポスト『ポスト社会主義』」)の21世紀の政治経済情勢下における、多様な社会・文化変容の比較研究を行う。1990年代から2000年代にかけて顕著になった政治経済情勢の変化には、中央政府の統制強化、経済成長と社会格差の拡大、国家による資源独占、政府主導の歴史認識の再構築、政策的な「伝統文化」復興、EUとNATOの東方拡大、対テロ対策に伴う対米関係の変化、そして一部の国における民主主義の成熟または破綻などがある。本研究会では、このような情勢の変化の下で、ポスト社会主義を経験し,2000年代を生きる人々の生活現場で何が起きていたのか、彼らの社会や文化がどのように変化したのか、その変化の原動力は何だったのかを、地域横断的に比較する。それによって、生活現場におけるかつての社会主義という体制の持つ意味を再検討するとともに、「スラヴ・ユーラシア地域」とも呼ばれるこの地域を研究対象として再編することを目指す。(民博ホームページよりhttp://www.minpaku.ac.jp/research/activity/project/iurp/08jr107)。

 この研究が実施された2000年代後半から2010年代初頭はリーマンショック(2008年)による世界的な金融危機が、世界各国政府の積極的な財政政策によって経済恐慌となることをかろうじて防ぐとともに、改めて中国をはじめとする「新興国」の存在がクローズアップされてきた時代であった。その中で、当時はまだ原油、天然ガスの価格の上昇が続き、その輸出に依存するロシアも経済が順調に成長する状況にあり、BRICS(ブラジル、ロシア、中国、南アフリカの英語の頭文字を並べたもの、かつて一時BRICsと呼ばれたが、その時期には南アフリカが入っていなかった)などと呼ばれて存在感が回復しつつあった。他方、かつてソ連の一部、あるいは勢力圏内に置かれていた東欧、バルト地域では多様化が進み、早々にEU加盟から共通通貨ユーロの導入にまで至る国から、まだまだ再建がおぼつかない国まであり、ロシアとEUの間のパワーゲームの舞台と化した国もあった。また、モンゴルは中国の影響が増大しつつも、巧みに多様な国々からの援助を取り付け、資源開発も進めながら、独自のポスト社会主義状況を歩んでいた。

 本共同研究はそのような状況の中で東欧、旧ソ連、モンゴル、中国などでフィールドワークを続けてきた比較的若手(20代後半から40代前半まで)の研究者を集めて、各地の事例を紹介し合いながら、もはや「ポスト社会主義」ではない旧社会主義地域の状況を、ミクロな視点から比較するということを行った。また、時折特別ゲストとして、この地域出身で身をもってポスト社会主義とその後の状況を体験してきた研究者や、欧米で1990年代よりポスト社会主義研究を続けてきた研究者にも参加してもらって、研究報告と討論を行った。共同研究で実施された研究会の詳細は表(共同研究実施一覧)にまとめた。

 共同研究全体としては暫定的ではあったが、以下のような成果が得られた(民博ホームページよりhttp://www.minpaku.ac.jp/research/activity/project/iurp/08jr107)。

 3年半の研究活動の成果の中でまず第1に上げたいのは、若手の研究者の台頭である。本研究会が対象とした地域(旧ソ連、東欧、モンゴル)は、1990年代初頭までは我が国の人類学者に全く顧みられてこなかった地域である。現在でも決して関心が高いとはいえないが、このテーマの下に館外から22名の研究者、それも大半が准教授クラス以下の職にいて、40代前半以下の世代に属す研究者が集まった。このことは、この地域、分野の研究がこれからさらに隆盛することが期待できることを示している。

 その若手の研究者が中心となった研究活動は国際色も豊かだった。ポスト社会主義時代を生きる地域の中心的存在であるロシア連邦からだけでなく、北欧、東欧、モンゴルなどから来た研究者を、ゲストスピーカーとしてほぼ全ての研究会で招いたが、それは班員が持つ国際的な人的ネットワークを活用した結果である。本研究会で目指したこの地域、分野の若手育成と研究の国際化という点では着実な成果を上げることができた。

 研究の内容に関しては、「スラヴ・ユーラシア地域」概念の再考までは至らなかったが、ポスト社会主義後の社会を生きる人々の文化、社会の動態をかなり詳細に明らかにすることができた。さらに、その比較を通じて、50〜70年にわたって続いた社会主義(特にソ連型社会主義)という政治経済体制、社会思想が人々の日常生活の奥深くまで行き渡っていたこと、しかし、社会主義体制崩壊後の混乱を経た後、その影響は宗教や国家体制の相違など地域や民族ごとの事情によって多様化していることが明らかになってきた。

 2000年代から2010年代に入り、経済と情報のグローバル化によって、先進諸国の経済の変調が世界中に強い影響をまき散らし始めた。そのような情勢の中で、社会主義とポスト社会主義を経験した地域の人々もそれに深く巻き込まれ、また同時に彼らの動向が日本にも影響を与えている。実はそれを経験した人々が暮らす地域、すなわちいわゆる「スラヴ・ユーラシア地域」、あるいは東欧と内陸アジア、東北アジアを包含する地域は、豊富な天然資源を埋蔵する、潜在力の大きな市場を有するという経済的な側面だけでなく、長く分厚い歴史と多様な文化を有するという面でも、目が離せない地域である。日本の人類学あるいは地域研究において、この地域に対する関心が未だにさほど高くならないというのは憂慮すべき事態であるといえるだろう。

 この共同研究終了の後、本書で扱った東欧、ヨーロッパロシア、中央アジア、モンゴル、シベリア・極東などを含むスラヴ・ユーラシア地域の情勢は再び大きく変わろうとしている。2012年に再び大統領に就任したV・プーチンがロシアの国益を前面に出し、再び超大国を目指すような外交を展開しはじめ、EU諸国やアメリカと激しく対立する事態となっている。ことにウクライナをめぐる対立によって欧米側から課せられた経済制裁と近年の原油価格の低迷が原因となって好調だった経済にブレーキがかかり、その減速が懸念されるようになっている。

 旧ユーゴスラビア地域の大部分とベラルーシ、ウクライナを除いてほとんどすべての国がEUに加盟した東欧、バルト地域では比較的安定した政治経済運営が続けられているが、それでも技術開発を起点として経済が好転しているドイツ、北欧、バルト諸国と、国債の格付けが下がってきたハンガリー、ドイツや北欧などに労働者を供給するポーランドやルーマニアなどとの間には格差が見られる。そして、ウクライナではロシアとEU・アメリカとの間のパワーゲームが、2014年にはロシアによるクリミア併合から、親ロシア派武装勢力と政府軍との間の戦闘にまでエスカレートしてしまった。また、深刻な経済危機に陥ったギリシアは一時ユーロ圏からの離脱さえ真剣に議論された。

 また、アメリカ、ロシア、EU、中国といった巨大パワーを持つ国家や国家連合が隣接し合う地域では、少しでもパワーバランスが崩れれば、政治も社会も不安定化し、最悪の場合ウクライナ東部のように武力紛争に発展する危険は常にある。ウクライナはEUの東方拡大によってロシアとの境界となったためにそのような事態に陥ったともいえる。それ以外にもロシアと中国の勢力が接する中央アジア東部や中国新疆でも同様の危険をはらんでおり、東アジアでも南シナ海や東シナ海でアメリカと中国の勢力がせめぎ合う事態が懸念されている。さらに、EU諸国の経済危機とデフレ懸念、失業率の高止まりなどに起因する排外主義の広がりと、西アジアや北アフリカに拠点をもつ過激派組織によるテロの可能性も、状況を劇的に変えてしまう要因として目を離せない。

  おそらく、国際政治学や経済学、あるいは社会学などの分野では、2010年代以降は2000年代までとは異なる新しい状況が展開しているとして分析されるのだろう。しかし、人類学の調査研究対象とされる都市や村落、あるいは移動天幕などで暮らす庶民のミクロなレベルでの生活はどうだろうか。ウクライナのように政変から一部の地域が戦闘状態となってしまった国は別だが、EUに入ってしまった東欧でもプーチン体制下のロシアでも、未だに独裁体制が続く中央アジアの国々でも、一応それなりに政治体制が安定し、人々の暮らしもそれほど大きくは変わっていないように見える。ロシア経済の減速が懸念されているが、例えばそれがソ連崩壊直後のように極東の先住少数民族の村の生活まで一変させるような事態には至っていない。

 つまり、ソ連型社会主義を経験した地域におけるポスト社会主義後の状況は、地域内での多様性が拡大し、経済格差も広がりつつあり、またポスト社会主義時代以来の紛争を抱えた地域ではまだ対立の火種やテロの危険が残されてはいるが、その一方で、社会主義体制崩壊直後の1990年代に比べれば、各地でなんとか安定した政治運営が行われ、社会もどうにか平穏な状態を保っているとはいえるだろう。

 ところで、旧ソ連をはじめ、かつて社会主義体制が国の隅々まで浸透していたような地域や社会で、人々とともに生活するという経験を持つと、必ずさまざまな形の社会主義の残滓が見えてくる。本論集で取り上げられた事例はほぼすべてそのような残滓を含んでおり、著者たちは、意識するしないにかかわらず、それに向き合いながら調査してきた。2000年代に入り、各地域で政治経済情勢は多様化した。世代交代も進み、人々の日常生活から一見その影響は消え去っているかに見える。そのような残滓は政治学や経済学、社会学などの方法論では恐らく研究対象とはならず、見過ごされることになるだろう。人類学者でも実際に社会主義時代を、身を以て経験したものしか気づかないのかもしれない。しかし、その経験がなくても、調査時に感じる得体の知れない生活上の違和感の中に旧社会主義体制の特性が含まれていて、そのような社会での調査経験があればだいたいその存在に気づく。

 「さまざまな形の社会主義の残滓」と記したが、そこには一定の共通性も見て取れる。それは、もともとは社会主義体制が目指した理想と現実の一部なのだが、実際には社会主義的「近代化」の一部であり、また統治のために温存されて活用された地域の「伝統」の一部でもある。そこにマルクス主義イデオロギーのスパイスがきかされているのも共通する。それらは社会主義時代に建設され、いまでも使われているような建物に見られたり、役所や図書館、病院などの公共施設が提供するサービスシステムに潜んでいたりする。その残滓の共通性と相違点を比較し、現代におけるその存在の意味を考察していけば、社会主義経験のある社会の特徴をあぶり出すことができる。さらに、そのような経験のない社会に比較対象を広げていけば、序章で触れたポスト植民地主義との関連性の他、多文化主義、先住民族など他の人類学の諸問題を考察する上でも、欠かすことのできない重要な参照対象となる。本書を構成する論文は、その視点は多様だが、著者たちが調査対象とした社会や人々の実生活の中で感知した、社会主義を経験したゆえに残されたものにあえて着目して、それに対する分析や考察を中心的な課題としたものばかりである。それを記述、分析するのに、「社会主義」ということばを語幹に据えた概念を使わずには済ますのは不可能である。選ばれたエリートたちが支える政治経済体制を議論する政治学や経済学、あるいは知識人たちの知的動向を中心に検討する思想史研究などと異なり、人々の実生活に密着した視点を持つ人類学者にとっては、「社会主義以前」、「社会主義」、「ポスト社会主義」、「ポスト社会主義以後」(「ポスト・ポスト社会主義」)という「社会主義」に接辞を付けたような時代区分はまだまだ有効だろう。序章の最後で述べた通り、その意味で「ポスト社会主義以後」という時代設定と研究対象は、人々の実生活を直視する人類学だからこそ必要とするものともいえるだろう。

 本論集で調査の主要な対象としたのは東欧、ヨーロッパロシア、中央アジア、モンゴル、シベリア・極東、そして中国といった地域だった。この地域は冷戦時代にはそれこそ国や地域の隅々まで社会主義体制が浸透し、それが長期間にわたって維持され、そして冷戦終了後に崩壊し、10年を経てようやく「移行期」を終えた。その意味でこれらの地域には共通性があり、いまだ社会主義体制下にある中国を含めるのにはいささか躊躇はあるが、「スラヴ・ユーラシア」という地域設定には「ポスト社会主義以後」という時代設定も含めて、「社会主義」を語幹に据えた概念による時代区分と親和性がある。ただ、社会主義を経験した、あるいはまだ社会主義体制下にある国や地域は東南アジアや中南米、アフリカにも多数ある。それらの地域も含めた形で「ポスト社会主義以後」という時代設定と研究の地域的枠組みが可能かどうかは、今後の検討課題ということになる。……後略

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【執筆者紹介】掲載順 *は編者

佐々木 史郎(ささき・しろう)*
1957年生。
学術博士(東京大学)。
国立民族学博物館先端人類科学研究部教授。
専門は文化人類学。特にロシアのシベリア、極東地域の先住民族の狩猟文化とトナカイ飼育文化、同地域の近世、近代史を研究している。
主要業績に『シベリアで生命の暖かさを感じる』(臨川書店、2015、単著)、「北東アジア先住民族の歴史・文化表象―中国黒竜江省敖其村の赫哲族ゲイケル・ハラの人々の事例から」(『国立民族学博物館研究報告』39(3)、2015)、「鳥居龍蔵が出会った北方民族―千島アイヌ」(ヨーゼフ・クライナー編『日本とは何か―二〇世紀の民族学』東京堂出版、2014)など。


渡邊 日日(わたなべ・ひび)*
1970年生。
博士(学術)(東京大学)。
東京大学大学院総合文化学研究科教員。
専門は文化人類学、シベリア民族学。
主要業績に『社会の探究としての民族誌』(三元社、2010、単著)、「ロシア・ブリヤーチアに於ける多言語状況の諸相―ブリヤート標準文章語をめぐる言語政策とその変容」(砂野幸稔編『多言語主義再考―多言語状況の比較研究』三元社、2012)、「歴史と記憶との狭間を生きることについて」(塩川伸明・小松久男・沼野充義編『ユーラシア世界3  記憶とユートピア』東京大学出版会、2012)、「ロシア民族学に於けるエトノス理論の攻防―ソビエト科学誌の為に」(高倉浩樹・佐々木史郎編『ポスト社会主義人類学の射程』国立民族学博物館調査報告第78号、2008)など。


神原 ゆうこ(かんばら・ゆうこ)
1977年生。
博士(学術)(東京大学)。
北九州市立大学基盤教育センター准教授。
専門は文化人類学、中欧地域研究。体制転換後のスロヴァキアにおける「市民」意識や、コミュニティを支えるモラリティと社会システムのありかたに関心を持つ。近年はハンガリーにも研究対象を広げつつある。
主要業績に『デモクラシーという作法─スロヴァキア村落における体制転換後の民族誌』(九州大学出版会、2015、単著)「『共生』のポリシーが支える生活世界─スロヴァキアの民族混住地域における言語ゲームを手がかりとして」(『年報人類学研究』5: 45-71、2015)、など。

柚木 かおり(ゆのき・かおり)
1971年生。
Kandidat kul'turologii (Moskva, GII)、博士(学術)(総合研究大学院大学)。
関西外国語大学非常勤講師。
専門は地域研究、文化学。ヨーロッパ・ロシアのロシア人の文化が対象。特に、ロシアの民俗楽器バラライカとそれを取り巻く環境を研究対象とする。演奏文化、伝統の継承、文化の復興と保存、文化政策に関心を持つ。
主要業績に、«Balalaika v bespis'mennoi traditsii dovoennogo vremeni: Issledovatel'skii ocherk». Moskva: RAM im. Gnesinykh, 2004(単著)、『民族楽器バラライカ』(日本ユーラシア研究所ブックレットNo. 88、東洋書店、2006、単著)、「民族楽器の大量生産─バラライカとソ連の五カ年計画」(『東洋音楽研究』71、2006年)、Myzykant - tsentr razvrecheniia v nochnom gulian'e (Sbornik statei Mezhdunarodnoi konferentsii "Noch' II: ritualy, isskustvo, razvrecheniia." SPb: Dmitrii Bulanin, 2009) など。


伊賀上 菜穂(いがうえ・なほ)
1969年生。
博士(言語文化学)(大阪大学)。
中央大学総合政策学部准教授。
専門は民族学・文化人類学、ロシア史。現在は、ロシア、特にシベリア・極東地方におけるロシア系住民の宗教と文化を巡る諸問題、旧「満洲国」における日本人とロシア系移住者との関係について調査している。
主要業績に『ロシアの結婚儀礼―家族、共同体、国家』(彩流社、2013、単著)、「小説表象としての農村ロシア人女性」(生田美智子編『女たちの満洲―多民族空間を生きて』大阪大学出版会、2015)、「日本人が描いたロマノフカ村」(阪本秀昭編著『満洲におけるロシア人の社会と生活―日本人との接触と交流』ミネルヴァ書房、2013)など。


藤本 透子(ふじもと・とうこ)
1975年生。
博士(人間・環境学)(京都大学)。
国立民族学博物館助教。
専門は文化人類学、中央アジア地域研究。カザフスタンを中心に、中央アジアにおける社会再編とイスラームの関係について調査・研究している。
主要業績に『よみがえる死者儀礼―現代カザフのイスラーム復興』(風響社、2011、単著)、『現代アジアの宗教―社会主義を経た地域を読む』(春風社、2015、編著)など。


今堀 恵美(いまほり・えみ)
1974年生。
博士(社会人類学)(東京都立大学)。
聖心女子大学文学部非常勤講師。
専門は社会人類学、中央アジア民族誌学。中央アジア、ウズベキスタンの村落部で女性たちの「ものづくり」とジェンダー、ハラールと中央アジアのイスラーム信仰の関連を調査している。
主要業績に「中央アジア・ウズベキスタンのハラール食品生産―ハラール表示自粛以前のウズベク企業の対応」(砂井紫里編『食のハラール』早稲田大学アジア・ムスリム研究所リサーチペーパー・シリーズVol. 3、2014)、「ウズベク・ムスリムにおける礼拝用敷物とイスラーム信仰実践」(『イスラーム地域研究ジャーナル』4、早稲田大学イスラーム地域研究機構、2012)ほか。


尾崎 孝宏(おざき・たかひろ)
1970年生。
修士(学術)(東京大学)。
鹿児島大学法文学部教授。
専門は社会人類学、内陸アジア牧畜社会論。モンゴル系牧畜民社会を中心とする、近代政治経済システムとの関係性に起因する社会変化を主たる研究対象としている。
主要業績に『モンゴル遊牧社会と馬文化』(日本経済評論社、2008、共編著)、「モンゴル牧民社会における郊外化現象―ポスト『ポスト社会主義』的牧民の出現に関する試論」(高倉浩樹・佐々木史郎編『ポスト社会主義人類学の射程』国立民族学博物館調査報告第78号、2008年)、「自然環境利用としての土地制度に起因する牧畜戦略の多様性」(『沙漠研究』23(3)、2013)など。


川口 幸大(かわぐち・ゆきひろ)
1975年生。
博士(文学)(東北大学)。
東北大学大学院文学研究科准教授。
専門は文化人類学。特に、中国東南地域の親族・宗教と共産党の政策との関係について研究している。
主要業績に『東南中国における伝統のポリティクス―珠江デルタ村落社会の死者儀礼・神祇祭祀・宗族組織』(風響社、2013、単著)、『現代中国の宗教―信仰と社会をめぐる民族誌』(昭和堂、2013、共編著)、『僑郷―華僑のふるさとをめぐる表象と実像』(行路社、近刊、共編著)などがある。

 

 

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