ボリビアの先住民と言語教育 別巻17
あるベシロ語(チキタノ語)教師との出会い

東部低地チキタニア地方の言語教育、とりわけ一個人の人生に焦点をあて、ボリビアの歴史や文化を紹介しようとする試みである。
著者 | 中野 隆基 著 |
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ジャンル | 人類学 |
シリーズ | ブックレット《アジアを学ぼう》 > ブックレット〈アジアを学ぼう〉別巻 |
出版年月日 | 2019/10/25 |
ISBN | 9784894894181 |
判型・ページ数 | A5・54ページ |
定価 | 本体600円+税 |
在庫 | 在庫あり |
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目次
1 ボリビアとはどのような国か──自然環境・人・言語の多様性
2 今日のボリビアの政治改革と本書の問い
一 チキタニア――そこに住む人々と言語
1 チキタニア地方、チキタノ、ベシロ語(チキタノ語)について
2 本書の舞台とロメリーオ地域について
3 チキタニア地方の政治情勢
4 チキタニア地方におけるベシロ語教育
5 ベシロ語教師ルベンについて
二 ボリビア国家の形成と変容――先住民と言語の位置付けをめぐって
1 ボリビアにおける国家・先住民・教育
2 ボリビア東部低地におけるチキタノの歴史・言語・教育
三 ベシロ語教師ルベンとの出会い
1 ルベンとその家族との出会い
2 ルベンの語り
四 ルベンのベシロ語授業の風景
1 筆者への個人授業
2 学校におけるベシロ語授業の風景
3 多文化・多言語政策の抱える矛盾
おわりに
注・参考文献
あとがき
内容説明
多文化・多言語の国をひもとく
南米の内陸国ボリビアはアンデス高原とアマゾン低湿地帯からなる。本書は、その東部低地のチキタニア地方の言語教育に焦点をあて、ボリビアの歴史や文化を紹介しようとする試みである。
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…… このような政策は、はたして実際にはどのように進行しているのだろうか。多様性を認め合い、同時にそれぞれの言語や文化を強化・復興していくということは、簡単に実現できるものなのだろうか。
先住民言語教育を進めている、隣国エクアドルで問題となったのは、ある言語の文語(体)を整備しようとすると、地域変種(地域の言葉)が教育の現場から捨象されてしまうことである。多様性を互いに理解することが目的であるはずの先住民言語教育が、むしろ一つの「言語」に括られることで地域変種の多様性を疎外してしまうのである[Wroblewski 2010、cf. 渡邊 二〇〇七]。多文化・多言語主義を掲げるボリビアでも、このような地域変種の多様性と一元的な言語政策の矛盾が生じてはいないだろうか。これが本書の出発点である。
本書では、ボリビアの先住民言語教育の実態に迫るため、チキタニア地方に居住する先住民チキタノが使用する言語、ベシロ語(チキタノ語)の教育政策がどのように行われているか、ベシロ語教師ルベンの語りと授業実践から考えていく。そのために、ボリビアという国家の歴史、本書の舞台であるチキタニア地方に居住するチキタノとベシロ語について、簡単な紹介も行いたい。
本書は次の構成をとる。第一節では、チキタノとベシロ語、チキタニア地方の政治情勢、同地方におけるベシロ語教育の位置付けについて述べる。第二節では、ボリビアが「多民族国家」と名乗るまでの概略と、そのような歴史的な流れの中で、チキタノとベシロ語を取り巻く状況がどのように変化してきたのか、その経緯について述べる。第三節では、筆者が生活を共にしたロメリーオ地域出身のベシロ語教師ルベンが、どのような生い立ちをもち、どのようなベシロ語教育観をもっているのかを彼の語りから考えていく。第四節では、実際の彼の授業はどのようなものか、筆者に対する個人授業と学校における授業から示しつつ、ボリビアにおける多文化・多言語政策の問題点を考えていく。……
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著者紹介
中野隆基(なかの りゅうき)
1988年、広島県生まれ。
大阪大学外国語学部国際文化学科比較文化専攻スペイン語コース卒業、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻文化人類学コース修士課程修了、同博士課程在籍。修士(学術)。
現在、東京海洋大学、上智大学非常勤講師。
主な論文に「制度的場をめぐる多言語社会研究に向けて」(『社会言語科学』第19巻第1号, pp. 21-37, 2016)、"¿Conflictos o Diálogos?: Un Informe sobre el Proceso Actual de la Educación Intercultural Bilingüe del Pueblo Indígena Chiquitano de la Región Chiquitania, Bolivia"(Perspectivas Latinoamericanas, 13: 185-198, 2016)などがある。