韓国朝鮮の文化と社会 19
特集=近現代韓国・朝鮮における街頭集会・示威
著者 | 韓国・朝鮮文化研究会 編 |
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ジャンル | 定期刊行物 |
シリーズ | 雑誌 > 韓国朝鮮の文化と社会 |
出版年月日 | 2020/10/15 |
ISBN | 9784894899698 |
判型・ページ数 | A5・218ページ |
定価 | 本体3,500円+税 |
在庫 | 在庫あり |
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目次
〈問題提起と視点〉
近現代韓国・朝鮮における街頭集会・示威 (月脚達彦)
三・一独立運動における「万歳」の歴史的意味
――朝鮮王朝への「挽歌」と近代的ネイションとしての朝鮮の「産声」 (松谷基和)
キャンドル集会にみる「過去と未来の対話」
――「一九八七年フレーム」に表れた歴史意識から考える (真鍋祐子)
研究ノート
キム・ジョンウン遥かに――或る在日コリアンのライフヒストリー (野崎充彦)
資料紹介
「秋収記」にみる農村のすがた (嶋陸奥彦)
書評
裵淵亨著『韓国留音機音盤文化史』 (山内文登)
本の紹介
『完訳定本択里志』 (六反田豊)
ひろば/マダン
ポスト・コロナ時代の授業「韓国文化」を考える (山本華子)
展評
近代書画――春の黎明の目覚め (金貴粉)
エッセイ
江陵鏡浦台――朝鮮士人と亭子文化(三) (長森美信)
農楽と能楽――国立能楽堂における二〇二〇年交流公演の記録 (神野知恵)
彙報
編集後記
韓国・朝鮮文化研究会会則
英文目次・ハングル目次
執筆者一覧
内容説明
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【問題提起と視点】 月脚達彦 より
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植民地期朝鮮の最大の独立運動である三・一運動から一〇〇年を迎えた。二〇一八年から二〇一九年前半期にかけて、韓国を中心にそれを記念する書籍が刊行され、また歴史学関係のシンポジウムや雑誌の特集が組まれている。三・一運動一〇〇周年に際しての内外の学会等の動向を踏まえ、本研究会も一〇月の研究大会で三・一運動に関連するシンポジウムを企画することとした。
もとより本研究会は、歴史学を専門とする研究者を主として構成されているわけではなく、韓国・朝鮮の文化と社会にかかわる多様な分野にわたる研究者によって構成されている。こうした本研究会の会員の構成を踏まえ、大会シンポジウムでは、歴史学のみならず、文化人類学、社会学などの諸分野の研究者の知見を持ち寄り、活発な議論が期待されるものとして「街頭集会・示威」をテーマとして設定した。
三・一運動は「万歳事件」とも呼ばれたように、ソウル鍾路のパゴダ公園(現タプコル公園)に集会した学生らが、「独立宣言書」朗読ののち、「独立万歳」を唱えて街頭を示威行進したことに端を発する。同日、万歳示威行進は平壌・宣川・義州など、北部の都市でも行われている。それは地方にも拡散し、やがて暴力行使を伴うようにもなった。運動への参加者は一〇〇万人以上と推測され、大規模な独立運動を予想していなかった朝鮮総督府は、それまでのいわゆる「武断統治」から、斎藤実総督の標榜する「文化政治」へと統治の方針を転換することとなった。独立は実現しなかったが、一九二〇年代の朝鮮では都市を中心に「近代」が浸透し、社会の変容が本格化することになった。
このように、三・一運動は近代朝鮮の画期の一つとなっているが、解放後の韓国においても、街頭での集会・示威が時代の画期をもたらした例は数多く存在する。一九六〇年の「四月革命」、一九八七年の「六月民主化抗争」などが代表的なものであり、二〇一六年の「キャンドル集会」が記憶に新しいところである。
のちに見るように、筆者の考えでは、ソウルにおける街頭集会の起源は一八九六年に結成された独立協会の運動、および一八九八年に独立協会が開催した万民共同会に遡るが、一九世紀末から三・一運動を経て今日に至る近現代韓国・朝鮮における街頭集会と示威について、様々な分野の参加者と議論を交わし、街頭集会と示威をとおした韓国・朝鮮の文化と社会に関する今後の研究の方向性をつかみたいというのが、二〇一九年の研究大会シンポジウムの狙いである。
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執筆者一覧(掲載順)月脚 達彦 東京大学大学院総合文化研究科 教授
松谷 基和 東北学院大学教養学部言語文化学科 准教授
真鍋 祐子 東京大学東洋文化研究所 教授
野崎 充彦 大阪市立大学大学院文学研究科 教授
嶋 陸奥彦 東北大学名誉教授
山内 文登 国立台湾大学文学院音楽学研究所 教授兼所長
六反田 豊 東京大学大学院人文社会系研究科 教授
山本 華子 小田原短期大学保育学科 講師
金 貴粉 国立ハンセン病資料館 主任学芸員
長森 美信 天理大学国際学部 教授
神野 知恵 国立民族学博物館学術資源研究開発センター 機関研究員