国際的視野のなかの溥儀とその時代
関係諸国の史料をもとに、歴史・社会・政治・文化などの最新の研究成果を概観,国際的視野のなかで溥儀とその時代を再評価。
著者 | ボルジギン フスレ 編 |
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ジャンル | 歴史・考古・言語 報告書・報告論集 |
シリーズ | アジア研究報告シリーズ |
出版年月日 | 2021/03/25 |
ISBN | 9784894898097 |
判型・ページ数 | A5・152ページ |
定価 | 本体2,000円+税 |
在庫 | 在庫あり |
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目次
ご挨拶:国際シンポジウム「国際的視野のなかの溥儀とその時代」 (昭和女子大学理事長・総長 坂東眞理子)
ご挨拶:国際シンポジウム「国際的視野のなかの溥儀とその時代」 (昭和女子大学国際文化研究所所長 友田博通)
「溥儀とその時代」の研究に関するいくつかの問題 (王 志強)
愛新覚羅・溥儀と満洲国の国語 (田中克彦)
溥儀研究をめぐる近年の動向 (塚瀬 進)
カンジュルワ・ホトクトと溥儀の交際の一コマ:1913年「内モンゴル丑年動乱」でのカンジュルワ・ホトクトの印章について (海 中雄)
末代皇后の教師「任薩姆」について (程 方毅)
溥儀をめぐる中ソ交渉 (ボルジギン・フスレ)
溥儀皇帝の最後の秘密 (エレーナ・カタソノワ)
満洲の日本占領と溥儀(ソビエトロシアの観点):日本の満洲占領と日ソ関係,その二元性と変貌 (コンスタンチン・O・サルキソフ)
最後の皇帝溥儀の身分の転換から見る中国共産党の改造政策と統一戦政策 (陳 宏)
「伝統」はいかに再現,再創造されたか:映画『ラストエンペラー』における結婚式,皇后婉容,淑妃文綉の民族衣装を事例に (ソルヤー)
文物溥儀 傀儡皇帝篇Ⅰ (陳宏・王文麗)
内容説明
関係諸国の膨大な多言語史料をもとに、歴史・社会・政治・文化などの最新の研究成果を概観,国際的視野のなかで溥儀とその時代を再評価。2020年の昭和女子大学100周年記念国際シンポジウム「国際的視野のなかの溥儀とその時代」の成果。
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ボルジギン・フスレ(Husel Borjigin)
2020年12月19日,昭和女子大学100周年記念国際シンポジウム「国際的視野のなかの溥儀とその時代」が昭和女子大学で対面とオンラインを併用して開催された。同シンポジウムは,近年の研究の歩みをふりかえり、関係諸国に所蔵されている膨大な多言語の史料を統合し,歴史,社会,政治,文化などの諸分野の最新の研究成果を概観し,国際的視野のなかで溥儀とその時代を再評価しながら,創造的な議論を展開することを目的とした。
溥儀は清朝,中華民国,満洲国,シベリア抑留,中華人民共和国といった時代を経験した重要な人物である。にもかかわらず,関係諸国それぞれの溥儀,満洲国に対する認識はことなる。各国の研究者により,「溥儀とその時代」から,北東アジア史を再構成することをとおして,新たな成果がうまれるはずだと信ずる。
本書は,同シンポジウムで報告された9本の論文に,ソルヤー(Suruya)が執筆した論文と,陳宏(Chen Hong)と王文麗(Wang Wenli)が共同執筆した論文を加えて編まれた論集である。各執筆者は本シンポジウムの目的にそって,それぞれの問題の所在を探求してきたが,かならずしもみなが客観的な結論にいたったとはいえず,解明されていない点がおおく残されている。また,本書は,叙述の形式などを各執筆者にゆだねたため,文体や表記などは必ずしも厳密に統一できなかった点もあるが,ご容赦いただければ幸いである。
シンポジウムが成功裏に開催できたのは,下記の方々からあついご支援とご尽力をえられたからである。すなわち昭和女子大学理事長・総長坂東眞理子先生,国際文化研究所所長友田博通先生,東京外国語大学名誉教授二木博史先生,昭和女子大学客員教授,元駐中国・インド日本大使谷野作太郎先生などである。また,昭和女子大学国際文化研究所職員鈴木弘三氏には煩雑な事務を手際よくまとめていただいた。
戸井久氏,納村公子氏には中国語の論文,小林昭菜氏にはロシア語の論文の翻訳を担当していただいた。ここに,上記の大学,団体およびおおくの関係者にかさねて厚く御礼を申しあげたい。
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ボルジギン・フスレ(呼斯勒/Husel Borjigin)
昭和女子大学国際学部国際学科,国際文化研究所教授。
北京大学哲学部卒。東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了,博士(学術)。内モンゴル大学芸術学院講師,東京大学大学院総合文化研究科・日本学術振興会外国人特別研究員,ケンブリッジ大学招聘研究者などをへて,現職。
主な著書に『中国共産党・国民党の対内モンゴル政策(1945~49年):民族主義運動と国家建設との相克』(風響社,2011年),『モンゴル・ロシア・中国の新史料から読み解くハルハ河・ノモンハン戦争』(三元社,2020年),共著『20世紀におけるモンゴル諸族の歴史と文化:2011年ウランバートル国際シンポジウム報告論文集』(風響社,2012年),『国際的視野のなかのハルハ河・ノモンハン戦争』(三元社,2016年),『日本人のモンゴル抑留とその背景』(三元社,2017年),『ユーラシア草原を生きるモンゴル英雄叙事詩』(三元社,2019年)など。
執筆者・翻訳者紹介(掲載順)
坂東眞理子(ばんどう まりこ/Mariko Bando)
東京大学卒業,クイーンズランド工科大学,テンプル大学名誉博士。
昭和女子大学理事長・総長。
内閣総理大臣官房参事官,統計局消費統計課長,男女共同参画室長,埼玉県副知事,内閣府男女共同参画局長,昭和女子大学などをへて,現職。
著書『男女共同参画社会へ』(勁草書房,2004年),『女性の品格』(PHP研究所[PHP新書],2006年),『日本の女性政策』(ミネルヴァ書房,2009年),『女性の知性の磨き方』(ベストセラーズ,2015年)など著書多数。
友田博通(ともだ ひろみち/Hiromichi Tomoda)
東京大学卒業,東京大学大学院建築学専攻修了,博士(工学)。
昭和女子大学国際文化研究所長,日越大学大学院地域研究専攻講師。
世田谷区景観条例検討委員会専門委員,日本建築学会住宅小委員会主査,一級建築士試験設計製図部会委員,建設省ベトナム支援委員会委員,文化遺産国際協力コンソーシアム運営委員他を歴任。
著書『心の住む家』(理工図書,1994年),『ベトナム町並み観光ガイド』(岩波書店,2003年)他。ベトナム・ホイアンの町並み保存他の国際協力で,ユネスコアジア太平洋州文化財保存賞3回・ベトナム文化大臣賞・日本外務大臣賞・文化庁長官賞・JICA理事長賞・建築学会賞他を受賞。
王志強(Wang Zhiqiang)
吉林大学大学院修士課程修了,修士(文学)。
中国偽満皇宮博物院院長,三級研究館員,東北師範大学兼任教授,長春溥儀研究会会長。
主な著書に,王志強『溥儀研究2』([主編]長春:吉林大学出版社,2016年版),『偽満時期史料類編・建築巻・「満州建築雑誌」彙編』([主編・全34冊]北京:綫装書局,2018年),『偽満時期史料類編・地方巻・省市県旗情況彙覧』([主編・38冊]北京:綫装書局,2018年),『偽満皇宮博物院学術文庫:溥儀・宮廷巻』([主編]長春:吉林出版集団,2018年),『偽満皇宮博物院学術文庫:文化交流巻』([主編]長春:吉林出版集団,2018年),『偽満皇宮博物院学術文庫:文物保護巻』([主編]長春:吉林出版集団,2018年)など多数。「吉林省有突出貢献専家(吉林省優れた貢献をした専門家)」に入選,東北地区中日関係史研究会第4回科学研究成果著書類一等賞他を受賞。
田中克彦(たなか かつひこ/Katsuhiko Tanaka)
一橋大学大学院社会学研究科単位修得退学,博士(社会学)。
一橋大学教授をへて,現在,一橋大学名誉教授。
主な著書に,『草原と革命:モンゴル革命50年』(晶文社,1971年. 恒文社,1984年),『草原の革命家たち:モンゴル独立への道』(中公新書,1973年),『言語からみた民族と国家』(岩波書店,1978年),『ノモンハン戦争:モンゴルと満州国』(岩波新書,2009年),『「シベリアに独立を!」諸民族の祖国をとりもどす』(岩波書店,2013年)など。
塚瀬 進(つかせすすむ/Susumu Tsukase)
中央大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学,博士(史学)。
長野大学環境ツーリズム学部教授。
主な著書に,『中国近代東北経済史研究』(東方書店,1993年),『満洲国:民族協和の実像』(吉川弘文館,1998年),『満洲の日本人』(吉川弘文館,2004年),『マンチュリア史研究:「満洲600年の社会変容』(吉川弘文館,2014年),『溥儀』(山川出版社,2015年)など。
海中雄(Baatar C.H. Hai)
インディアナ大学大学院修士課程修了,修士。
モンゴル・チベット文化センター長,モンゴル文化協会理事長(台北)。
アメリカモンゴル学会指名委員会委員,ロシア連邦カルムイク共和国大統領アドバイザーなどを歴任。
主な著書に,Prince Palta of the Torguts, Indiana University, 1985,『内蒙古稀土産業与台湾高科技発展之関連性』(台北,2014年),主な論文に「国立故宮博物院蔵成吉思汗画像初探」(『蒙蔵現状双月報』第15巻第5期,2006年),「談々:章嘉大国師印」(『海潮音』第99巻第8期,2018年)など多数。「行政院高階公務人員研究奨」,モンゴル国工業・商業総会勲章,モンゴル国ホブド県名誉県民賞他を受賞。
程方毅(Fangyi Cheng)
清華大学卒,ペンシルベニア大学大学院博士課程修了,博士。
中山大学博雅学院准教授。
主な論文に,“Chinese Nomadic Art and The Journey to Collect: The Legacy of the Mayer Collection”, in Expedition, The Magazine of the University of Pennsylvania Museum of Archaeology and Anthropogy, 2016, winter, 「試論以庄士敦為紐帯的溥儀小朝廷社交活動:従一張被誤読的老照片説起」(『第八届溥儀及其時代国際学術研討会論文集』,長春,2020年)など。
ボルジギン・フスレ(Husel Borjigin)
編者紹介参照。
エレーナ・L・カタソノワ(Elena L. Katasonova)
モスクワ大学卒,博士(歴史学)。
現在,ロシア科学アカデミー東洋学研究所日本研究センター長,主任研究員。
主な著書に,Японские военнопленные в СССР: большая игра великих держав, Москва, 2003(邦訳『関東軍兵士はなぜシベリアに抑留されたのか』社会評論社,モスクワ,2004年),Последние пленники Второй мировой войны: малоизвестные страницы российско-японских отношений, Москва, 2005(『第二次世界大戦の最後の捕虜:露日関係の知られざるページ』ロシア科学アカデミー東洋学研究所,モスクワ,2005年),Японцы в реальном и виртуальном мирах, Москва, 2012(『現実世界と仮想世界における日本』,モスクワ,2012年)など多数。
コンスタンチン・O・サルキソフ(Konstantin O. Sarkisov)
サンクトペテルブルグ国立大学卒,博士。
慶應義塾大学特別招聘教授,山梨学院大学教授,国立政治大学客員(台北)教授など歴任。
現在,ロシア科学アカデミー東洋学研究所日本研究センター主任研究員,山梨学院大学名誉教授。
主な著書に『もうひとつの日露戦争:新発見・バルチック艦隊提督の手紙から』(朝日新聞社[朝日選書],2009年),Россия и Япония: Сто лет отношений (1817-1917), Москва, 2015(『ロシアと日本:百年の関係[1817~1917]』,モスクワ,2015年)など多数。旭日中綬章を受章。
陳 宏(Chen Hong)
中国長春偽満皇宮博物院研究館員(司書),長春溥儀研究会事務局長。
主な著書に『川島芳子生死大掲秘密』([共著]天津:天津人民出版社,2010年),『溥儀全伝』([共著]北京:群衆出版社,2016年),『末代皇帝溥儀在長春』([副主編]長春:吉林大学出版社,2016年),『末代皇帝溥儀在旅順』([副主編]長春:吉林大学出版社,2017年),『末代皇帝溥儀在旅順』([副主編]長春:吉林大学出版社,2017年),『偽満皇宮博物院学術文庫:溥儀・宮廷巻』([副主編]長春:吉林出版集団,2018年)など多数。中国近現代史史料学学会著書類一等賞他を受賞。
ソルヤー(Suruya)
東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程。
共著『日本・モンゴル関係の近現代を探る:国際関係・文化交流・教育問題を中心に』(風響社,2015年),主な論文に,「内モンゴル・フルンボイル地域におけるバルガ・モンゴル人の民族衣装について――シネ・バルガ人既婚男女の衣装,服飾を中心に」(『日本とモンゴル』第49巻第2号,2015年),「ガンジュール廟会とシルクロード・ティーロード」(『昭和女子大学国際文化研究所紀要』第23号,2016年)など。
王文麗(Wang Wenli)
中国長春偽満皇宮博物院研究館員。
主な著書に『偽満皇宮博物院学術文庫:溥儀・宮廷巻』([共著]長春:吉林出版集団,2018年),主な論文に「偽満時期“新京”“在満師範学校”発展変遷研究」(『大連大学学報』2020年第4期)など。長春市政府社会科学優秀成果論文三等賞他を受賞。
小林昭菜(こばやし あきな/Kobayashi Akina)
多摩大学経営情報学部事業構想学科専任講師。
法政大学国際文化学部卒,法政大学大学院政治学研究科博士後期課程修了,博士(政治学)。
2010年度日露青年交流センター若手研究者等フェローシップ受給,ロシア科学アカデミー東洋学研究所派遣研究員,ピッツバーグ大学世界史センター客員研究員,法政大学大学院国際文化研究科非常勤講師を経て現職。
主な著書に『シベリア抑留 米ソ関係の中での変容』(岩波書店,2018年),主な論文に「ドイツ人軍事捕虜の“反ファシスト運動”1941~1948年:“シベリア民主運動”発生のケースと比較して」(熊田泰章編『国際文化研究への道 共生と連帯を求めて』彩流社,2013年),『戦後のソ連における日本人軍事捕虜1945~1953年』(法政大学大学院博士学位取得論文,2015年)など。
戸井 久(とい・ひさし/Hisashi Toi)
昭和女子大学国際学部非常勤講師。
大東文化大学大学院文学研究科中国学専攻単位取得満期退学,博士(中国学)。
専門は中国近現代文学・思想。主な論文に「もう一つの『進化論講話』: 一九〇四年二月『新民叢報』掲載『進化論大略』から」[1・2](『埼玉大学紀要(教養学部)』第52巻2号2017年,同第53巻1号2018年),「探検から理想へ:留学後期魯迅の科学思想」(『東方学』109輯,2005年),翻訳に『中国現代散文傑作選1920~1940:戦争・革命の時代と民衆の姿』(中国三十年代文学研究会編,勉誠出版,2016年)など。
納村公子(なむら きみこ/Kimiko Namura)
翻訳などに従事,日中学院講師。