戦時下台湾の少年少女
植民地時代、台湾は3つの集団で構成され、教育制度も分かれていた。それぞれの学校生活・教師の姿・行事など、体験者の貴重な証言集
著者 | 白柳 弘幸 著 |
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ジャンル | 歴史・考古・言語 |
シリーズ | 風響社ブックレット 風響社ブックレット > 植民地教育史ブックレット |
出版年月日 | 2022/03/31 |
ISBN | 9784894893191 |
判型・ページ数 | A5・76ページ |
定価 | 本体800円+税 |
在庫 | 在庫あり |
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目次
一 戦前台湾の教育について
1 本島人・原住民・内地人
2 公学校・教育所・小学校
3 社会教育・国語講習所
二 本島人の少年少女
1 師範学校を出て教師になった古慶瑞さん
2 早稲田大学通信講義録で学んだ曽秀香さん
3 名前が四回も変わった葉崑玉さん
4 日本人小学校で学んだ陳玟珍さん
5 二節のまとめ――「公に奉じた」先生方
三 原住民の少年少女
1 花蓮県光復郷太巴塱にて
2 台東県知本にて
3 花蓮県卓渓郷古風村崙天にて
4 三節のまとめ――北京語習得とポスト・コロニアリズム
四 日本人の少年少女
1 台湾省立高雄第二中学校で学んだ松田和子さん(仮名)
2 「学徒兵」になった髙橋英男さん
3 四節のまとめ――終戦前後の学びと引き揚げ
おわりに
参考文献
資料
内容説明
「本島人」「原住民」「内地人」それぞれの証言
植民地時代、台湾は3つの集団で構成され、教育制度も分かれていた。本書は、3系統の学校生活・教師の姿・行事などを体験者から聞き取った「オーラルヒストリー」であり、生き生きとした語りから当時の実態が浮かび上がる。
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はじめに
台湾は太平洋戦争で日本が敗戦するまで日本の植民地でした。日本の中学校や高等学校の歴史の教科書では簡単にふれているだけですので、スペインやイギリスなど欧米の列強諸国が世界各地に植民地を持っていたことは知っていても、日本が植民地を持っていたことを知らない人もいるかも知れません。知っていたとしても、台湾での学校教育について知る方は少ないと思います。
私は小学校の教員として勤務後、学内の教育博物館に異動しました。博物館には戦前の台湾・朝鮮・満洲・南洋等で、現地の子どもたちが使用した教科書が多数所蔵されていました。その教科書を手に取ってみると、これまで見たことのない挿絵が描かれていました。その後、台湾総督府発行の修身教科書を中心として、教科書を通しての当時の教育政策などについて調べ始めました。いざ調べ始めると教科書や史料からだけでなく当時の子どもたちの学校生活の様子、先生方の学習の教え方や子どもたちとの関係、学芸会や運動会、遠足といった学習以外の様子などを知りたくなり、関係者の話を聞く調査を国内と台湾で始めました。自身の体験に基づく言葉には、研究論文、専門書、公文書などにはない生き生きしたものがありました。
筆者の関わった研究の一つに、戦前の中等教育を受け、戦前・戦後教職に就かれた方から、日本統治期に受けられた教育についての影響の有無や日本の教育への思いを聞き取る調査がありました。本書はそうした太平洋戦争前後の台湾で暮らしていた「戦時下台湾の少年少女」に、主に学校生活について尋ねたことを聞き書きしたものです。どこの節から読んでも結構です。興味がありそうな所から目を通してみてください。
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執筆者紹介
白柳弘幸(しらやなぎ ひろゆき)
1951年八王子市生まれ。
玉川大学文学部教育学科卒業。法政大学大学院日本史学専攻修了。玉川学園小学部教諭を経て玉川大学教育博物館学芸員。現在は玉川大学教育博物館専門スタッフ、玉川大学教育学部全人教育研究センター研究員。
論文に「植民地統治台湾草創期の初等教育:漢文教育と本島人教員」(『玉川大学教育博物館紀要』第17号、2020年)、「台南州における内台共学:台南南門尋常小学校を中心にして」(『植民地教育史研究年報』第21号、2020年)、「公学校修身書と理科書に見られる近代:衛生思想の啓発を中心として」(平成25~27年度科学研究費補助金(基盤研究(B)(一般))研究成果報告書、2016年)、「台北高等学校と成城高等学校:「自由」な校風と3名の教育者」(『台北高等学校創立90週年 国際学術研討会論文集』国立台湾師範大学台湾史研究所、2014年)、「台湾国民学校期修身教科書教材「心を一つに」についての一考察」(『帝国日本の展開と台湾』創泉社、2011年)、「台湾公学校における修身教育の創始:領有直後から明治末年まで」(『台湾教育史研究会通訊』第43期 台湾教育史研究会、2006年)など。