現代中国における満族
生活・信仰・氏族とその変容
発祥の地・新賓満族自治県の最新の調査から、民族誌的手法で現代の生活実態やその変貌を辿る
著者 | 張 琳 著 |
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ジャンル | 人類学 民俗・宗教・文学 社会・経済・環境・政治 |
シリーズ | アジア・グローバル文化双書 |
出版年月日 | 2023/03/31 |
ISBN | 9784894892927 |
判型・ページ数 | 4-6・216ページ |
定価 | 本体2,500円+税 |
在庫 | 在庫あり |
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目次
はじめに
序論
一 研究背景と目的
二 先行研究
三 研究対象と方法
四 本書の構成
第一章 満族について
一 歴史的起源
二 文化慣習
三 信仰
四 政治制度
五 現実概況
六 小括
第二章 調査地の概要
一 新賓満族自治県
二 永陵鎮
三 調査村
四 小括
第三章 社会環境と経済状況
一 政策の変遷
二 行政組織
三 戸籍制度と計画生育政策
四 経済の発展と改革
五 農業と出稼ぎ
六 小括
第四章 満族の信仰
一 シャーマニズム
二 祖先祭祀
三 保家神
四 信仰の多様化
五 信仰の実態と変遷
六 小括
第五章 氏族組織
一 氏族組織
二 歴史と現状
三 祖先祭祀
四 族譜と続譜
五 氏族組織の現状と発展
六 小括
第六章 民族間関係
一 歴史的背景
二 行政活動
三 信仰と生活慣習
四 小括
結論
あとがき
参考文献
図・表・写真一覧
索引
内容説明
発祥の地・新賓満族自治県の最新の調査から、民族誌的手法で現代の生活実態やその変貌を辿る
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はじめに
満族は中国の辛亥革命、土地改革、文化大革命、改革開放など幾つかの歴史的ポイントにおいて、柔軟に自己転身し、変容を見せながら今日のような姿に辿りついた。それぞれの歴史的変遷は政治的、経済的、生活面にとどまらず、彼らの精神的、内面的世界にまでも及んでいる。満族の発祥地である新賓満族自治県の事例を踏まえ、満族の生活実態と歴史変遷を明らかにし、現代の変容ぶりを考察する。すなわち、現代中国社会における急激な時代的変容のなかで、「変化」と「不変」という視座を通し、満族の民族的あり方を理解することを目的とする。満族の実像を描き出し、満族のことを改めて世界に見せようとするものである。
中華人民共和国成立以来、土地改革、社会主義現代化、改革開放、中国特色社会主義などの政策が絶えず打ち出されている。一九五〇年代頃から現在に至るまでの中国は計画経済から市場経済への変化が起こった。満族社会においても政治と経済状況は社会の発展とともに変わり、政治経済は①生産隊時期、②改革開放時期、③新しい経済改革時期という三つの転換期に大きく分けて、今日の様子まで辿り着いた。本書は現代社会における満族に焦点を当てて、中華人民共和国成立以降の社会的変遷に伴う満族社会の実態と変容を観察するものである。ここでは、新賓満族自治県の三氏族の事例を取り上げ、調査対象村の地域的特徴と政治的背景という二つの要素を考慮しながら、満族に関して政治経済、信仰、氏族組織及び民族関係などの側面から総括的に考察した。文化人類学的観点から今日の満族の実像を描き出し、正確、斬新な満族を直接に反映することを試みた。
なお、調査地の人々のプライバシーを保護するため、一部の地名や人名は仮名で書かれている。ご理解いただきたい。
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著者紹介
張琳(Lin Zhang)
1987年遼寧省撫順市生まれ。2017年金沢大学人間社会環境研究科博士後期課程修了。博士(学術)。専攻は文化人類学。現在、浙江大学研究員。主な業績に「地方、民族及び国家関係における氏族組織の機能:満族T氏に対するフィールドワークを例として」(青海民族研究2022年第3号掲載)など。