目次
凡 例
●第1部 研究史
第1章 国内における一般書の概説
第2章 家族・親族
第1節 北部の家族・親族
第2節 中部の家族・親族
第3節 南部の家族・親族
第3章 年齢
第4章 ジェンダー
第5章 物質文化
第1節 衣服
第2節 建築
第3節 考古
第6章 教育
第1節 ベトナム全土
第2節 少数民族教育
第7章 宗教・信仰
第1節 伝統宗教
第2節 北部少数民族の儀礼・宗教
第3節 メコンデルタの信仰祭祀
第8章 民族分類
第1節 民族概説書
第2節 民族政策と民族分類の関係に関する論文
第3節 ベトナムにおける民族の実体性の検討
第9章 言語・文字
第1節 ベトナム北部の文字継承の概況
第2節 民族語の言語音表記の試み
第10章 北部
第1節 北部キン族
第2節 北部村落社会
第11章 南部
第1節 南部キン族
第2節 南部村落社会
第12章 西北民族誌
第1節 民族誌的研究
第2節 歴史的文献研究
第13章 中部
第1節 中部高原民族誌
第2節 チャンパ、チャム
第3節 チャンパ、チャムに関する欧米の研究
第14章 華僑・華人
第1節 南部
第2節 北部
第3節 中部
●第2部 文献解題
A~Z
●第3部 付 録
引用誌名一覧
民族名対照表
索引
あとがき
内容説明
ドイモイ以降急速に行われた現地調査の蓄積はおびただしいものがある。本書は、ベトナムに関する文化人類学およびその関連分野の研究動向を概観し、おもな業績をえらび、その主要なものに解題を付したものである。人名・事項索引付き。
*********************************************
編者序文
本書は、ベトナムに関する文化人類学およびその関連分野の研究動向を概観し、おもな業績をえらび、その主要なものに解題を付したものである。
ベトナムは、有史以来中国およびインド両文明の影響を受け、また周辺地域からも様々な文化要素を受け入れ、独自の文化、社会を形成してきた。その多様性と統合のあり方は、人類学者にとってきわめて魅力的な対象であったが、人類学の集中的現地調査が行われるようになったのは近々十年余りにすぎない。その原因は、前世紀の大半この国が戦争状態におかれていたためである。1945年までは仏日による植民地からの解放闘争、その後も再侵入してきた仏支配からの独立闘争と抗米、抗中戦争の連続であり、平和が訪れたのは1980年代に入ってからのことであった。しかも戦後5年間は、国際的孤立と統制経済による経済的停滞が続き、1986年に始まるドイモイ政策の浸透につれてようやく経済以外の部門でも開放政策が実施されるようになった。
それと共に外国人研究者の滞在に対して門戸も開かれ、現地滞在型の調査の口火をきったのは歴史学であった。ここに書斎における文献資料だけに留まらず、現地体験を重視する新しい学風が生まれた。一方、民族学、文化人類学の宝庫ともいうべきベトナムであるが、村落など一定のコミュニティの人類学的な集中調査が可能になるのは、さらに数年後の1990年初頭になってからのことであった。それから十年間余り、フィールドに入る人類学者は急増し、学位取得者も10名に達しようとし、国際学術会議においても、米国に次ぐ勢いを示している。研究者の対象地域や関心領域も多岐にわたり、様々な形で発表されているため、いまや個人では全貌を把握することが難しくなりつつある。
そこで文化人類学の業績を集約するため、2002年から2006年にかけ「ベトナムに関する日本人類学研究の総括と現地への発信」という課題のもとで日本学術振興会の科学研究費補助金を受け研究会(研究分担者10名、研究協力者25名)を組織し、ベトナムに関する人類学的研究の文献目録を作成し、主要なものに解題を付し、それぞれの分野での研究の流れをまとめた。目録には日本の研究の全体における位置づけをはかる意味もあり、現地ベトナムや外国の研究の重要な業績も含めた。これまで研究成果の公表がほとんど日本語に限られため、国際的に知られること無く孤立していたが、科研費報告書において、ベトナム語訳をつけることにより、ベトナムの研究者や調査地の方々に現地還元とすると共に、国外で殆ど知られていなかった日本のベトナム研究の内容と水準を示し新たな学術交流の糸口とすることを目指した。その報告書『ベトナムに関する日本人類学研究の総括と現地への発信』(2006年3月)のうち、和文部分を日本で公刊するため加筆、修正したのが本書である。現在のきびしい出版事情から、報告書のベトナム語編は割愛せざるを得なかったが、姉妹編としてベトナムでの出版を考えている。
研究対象であるベトナム社会も、経済成長、都市化、人口移動の増大などにより著しい変容を遂げており、旧来の伝統的手法だけでは不十分で、新たな方法の開発が望まれる。本書の刊行が、人類学における研究者相互の連携および隣接分野との相互交流を一層深め、新たな展開の契機となることを期待したい。
本書は第一部研究史、第二部文献解題の二部で構成されている。第一部研究史では、狭義の人類学に限定せず、隣接領域における人類学と密接な関連がある研究分野を視野に入れた。第二部文献解題では、収録文献の選択を執筆者の裁量にゆだねることによって、日本国内のみならずベトナムやその他諸外国の研究成果を積極的に取り入れていった。本書では、2007年度末までに国内で刊行された著作・論文等を収録している。とりわけ、近年の日本国内におけるベトナム研究の発展を示すために、学位論文の充実を図った。その結果、日本における本研究の位置づけがより明瞭になったと思われる。第一部研究史では各研究史の文末に引用文献を付し、研究分野別に主要な文献を参照することが可能である。第二部文献解題では、本書の目的に沿う文献を著者名順に網羅的に採取し、その一部については解題を付している。なお、個々の文献に付された解題の有無、字数は、必ずしも対象論文への評価を反映したものではないことをお断りしておく。形式的な字数制限を設けることで収録対象を狭くするよりも、むしろ執筆者の研究視点からより広範囲の対象を収録することをめざしたものである。
*********************************************
著者紹介
編集委員会
末成道男(代表)、矢野正隆(Redactor)
樫永真佐夫、中西裕二、宮澤千尋、芹澤知広、本多守、新江利彦、川上崇、大野美紀子
編集協力
Chu Xua^n Giao、岡田雅志、吉本康子、澁谷由紀
執筆者一覧
伊藤正子 伊藤未帆 岩井美佐紀 岩月純一 遠藤正之 大泉さやか 大田省一
大西和彦 大野美紀子 岡江恭史 岡田雅志 小川有子 樫永真佐夫 片山須美子
川上崇 川村潮 佐藤(伊藤)まり子 設楽澄子 澁谷由紀 新江利彦
末成道男 住村欣範 芹澤知広 武内房司 中西裕二 中村理恵 西野範子
比留間洋一 藤倉哲郎 古屋博子 本多守 牧野直子 牧野元紀 三尾裕子
宮澤千尋 矢野正隆 吉本康子 李鎭榮 David G. Sox Shaun Malarney