目次
凡例
1 道教総論
1 通論
2 符・辟邪と諸術
3 道教史
4 道教の種種相
2 信仰の諸要素
1 信仰客体とその祀廟
2 経典・関連典籍
3 信仰の担い手たち
4 祭祀儀礼
5 社会生活と信仰
3 道教の土壌
1 老荘道家思想
2 神仙と神仙思想
3 世界観
4 古代社会と信仰
5 中国人の思惟方法
6 中国人の風俗習慣
4 道教の周辺
1 気と養生
2 医薬
3 諸宗教と道教
4 民間結社と宗教
5 神話・伝説・民話
6 文学・芸術
7 道教と科学
5 少数民族と道教
6 日本への伝播
1 受容過程
2 信仰・宗教
3 諸思想
4 文学・伝承
5 科学・医学
7 沖縄への伝播
8 台湾への伝播
1 道教と民間信仰
2 信仰の諸相
3 民俗と信仰
4 原住民と信仰
9 朝鮮半島への伝播
1 道教と民間信仰
2 信仰の諸相
3 信仰の周辺
4 民俗と信仰
10 香港への伝播
11 東南アジアへの伝播
事項索引
人名索引
内容説明
明治以降ほぼ一世紀にわたる日本語文献を網羅。近年著しく増加した道教研究プロパーのみならず、文学・本草・風水など関連分野、さらに中国少数民族や沖縄・東南アジアなど周辺地域も視野に入れた初の総合目録。人名・事項索引付き。
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凡例
1) 本書は道教および道教に関連する日本語文献を収集し、20世紀日本における道教関連の研究成果を総覧する目的で編纂した。そのため20世紀を基本に、19世紀末から20世紀の最後の年度に当たる2000年度(2000年4月~2001年3月)までの日本語文献を採録するように努めた。一部日本において発表された外国語文献も採録している。
2) 道教の概念は21世紀を迎えた今日に至っても、明確に規定されていると考えることは困難である。道教研究の一環として公表された文献はもとより、道教との関連を特に意識せずに公表されたと思われる文献も、視点によっては道教研究と密接に結びつくものがある。このため道教研究との関連を想定し得る文献は、できる限り網羅的に採録する方針をとった。また採録する文献は著書・論文を基本としたが、一部研究発表の要旨や著書中の章・節などの項目も採録した。なお再刊・再録等のある場合には、なるべくその都度採録するように努めた。
3) 本目録の配列並びに表記法は以下の原則に従っている。
1 同一分類内での配列は、原則的に発表年次に従い、同一年次の場合には書籍・論文の順とした。
2 書籍は『 』、論文は「 」で括り、論題中の「 」や『 』等はすべて『 』に統一した。
3 なるべく簡略な表記に努め、雑誌・紀要・記念論集の刊行主体は基本的に記さないこととした。ただし利用者のため必要と思われる場合には記すようにした。
4) 内容から複数の項目に分類可能な著書・論文も多い。しかし本目録では、煩瑣になることを避けるために、一つの論題を一つの項目に配すように努力した。またたとえば「斉天大聖」「西遊記」「孫悟空」「三蔵法師」などに関する文献は、「信仰客体とその祠廟」の項目に「斉天大聖」の関連文献として集中させたように、相互に関連性の強い文献はできる限り同一の項目に配するように努力した。分類に際してはできる限り原文献にあたって論題と内容を勘案するように努めたが、すべてを確認できたわけではなく、論題のみによって分類しなければならなかったものもある。
5) 前項の分類方法に拠って編纂された本書には、検索者の意図に反する項目に分類される文献も多々あるものと思われる。このような分類上の限界に配慮し、一つの試みとして簡略な「事項索引」を附してみた。これは、論題に含まれる主要語彙から検索できるように工夫したものである。また「人名索引」は執筆者に関するものであり、論題に含まれる特に歴史上の人名は事項索引を参照されたい。また人名の読みが必ずしも判然としないこともあって、配列は画数順とした。
6) 本書を成すに当たって、『東方宗教』隔号巻末の道教関係著書論文目録をはじめ、先行する諸種の文献目録あるいは諸論著中の引用文献を利用させていただいた。これらの文献目録や諸論著は多岐にわたり、そのすべてを掲げると、それだけで目録を作成せねばならないこととなる。そのため文献目録の直接道教に関するものは本書中の「A.道教総論─(1)通論─3. 研究動向・文献目録」ならびに各関連項目に掲げ、その他は割愛させていただくこととする。先行する諸種の文献目録作成者・作成機関に感謝の意を表したい。
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序文 石田 憲司
日本における道教研究の歴史は、早くは江戸時代にまでさかのぼることができるが、近代科学としての道教研究は明治30年前後、すなわち20世紀に先駆ける数年前に初めてその成果が公表されたにすぎない。20世紀に入ると大陸進出の風潮を反映し、あるいは植民地台湾の統治上の要請によって、道教研究の成果がつぎつぎと世に出されることとなった。しかしこのような事情を背景としていたため、道教研究の発展は跛行的であり、多くの面に研究の立ち後れが見られたことも事実である。20世紀のちょうど半ばにあたる戦後の昭和25年、日本道教学会が創立されて道教研究の拠り所となり、それ以後の日本の道教研究は飛躍的に発展することとなる。本書はこのような20世紀日本における道教研究の歴史を総覧する、道教に関連する総数一万余件の研究成果を収めたものである。
道教研究が近代科学の一端を占めるものであれば、「道教とは何か」とは最も基本的な問いかけであり、すべての道教研究者にはその答えが準備されているものと思われる。しかし本書の「道教の概念」に挙げる諸文献を見ても明らかなように、日本においては必ずしもその答えは一定したものではない。そもそも日本における道教研究は現実的な要請や興味を背景として、「道教はどのようなものか」を探ることから出発している。この結果、道教の概念規定を確定する作業とは別の次元で道教研究は進展し、「道教とは何か」との問いの答えは各研究者間で摺り合わせ途次にあるというのが現状であろう。
もとより本書は「道教とは何か」との問いかけに、一定の答えを提示することを目的とするものではない。しかし本書の編纂過程においては、データ収集の段階からこの「道教とは何か」との問いかけが付いてまわったことも事実である。また項目の設定やデータの分類作業に際しては、この問いかけを巡って深夜に及ぶ議論を幾度も繰り返した。さまざまな視点から文献検索がなされることを前提として、道教に関係すると思われる文献は幅広くかつ網羅的に収集したため、いきおい分類は便宜的とならざるを得ないが、最終的に語句索引で不備を補うとの原則をたてた。この結果、当初の予想を大きく上回る一万数千件に及ぶデータが集積されることとなり、独立させて独自の目録を作成すれば一冊の書籍になりうる項目さえ生ずるに至った。やむなく項目によってはその研究分野からすれば不備不十分となることを覚悟の上で、収集データの削除と再整理をおこなわざるを得なかった。事情ご賢察の上、寛恕を請う次第である。
ところで俗に十年一昔と言うが、本書出版の企画が出たのは一昔前のことになろうとする。創業間もない風響社で道教の文献目録を出版してみないかとの、中央大学文学部教授川越泰博氏からのお誘いに、自分の非力をも省みず喜んで応じてしまった。ともかく道教に関連する文献整理に着手したが、それまで集めていた手書きの文献カードを拡張する作業では、当時の情報量であってもとても追いつかないことに気づいた。やむなく不慣れなワープロの利用に踏み切ったが、収集したデータを結合して整理するには、ワープロの能力はあまりに小さすぎた。作業は遅々として進まず、無為に月日のみ過ぎ去っていった。
全くの偶然から畏友鈴木正弘氏との雑談で本書に話が及び、図書館資料やコンピュータに精通した浅野哲弘氏と共に編集に参加してくれたのが三年前である。以後、多くの仲間が集まって編集作業に取り組んできたが、鈴木正弘氏は常に中核となって作業の伸展を図ってくれた。その鈴木正弘氏と共に最終工程のデータチェックやコンピュータ処理、さらには現物と照らし合わせるために各地の図書館を駆け回ってくれたのは木村明史氏であった。また数年前までは石田の講義に出席していた諸氏が、大学院生となって山元貴尚氏を中心に膨大なデータの収集と整理に取り組んでくれた。そういう意味では、本書は若い研究者仲間の力を結集した成果であると言い得るであろう。
序文を結ぶにあたって、鈴木正弘氏の慨嘆をそのまま載せておきたい。すなわち、「本書の作業の過程で、IT化の進展に遭遇した。本目録作成の前半は手作業で、半ばはワープロで、後半はコンピュータで行われた。後半にはインターネットも活用し、データや意見のやりとりもEメールがつかわれた。21世紀の目録はこうしたコンピュータ上の『データ』に取って代わられるのかもしれない。しかし蒐集・分類という作業はその学問の枠組みを見つめ直す基本の作業であり、途絶えることはないであろう。我々も何時の日にか、本目録を見直し、より総合的な目録に向かえるよう研鑽を重ねなければならないのであろう」というのがそれである。
末尾ながら川越泰博教授ならびに台湾・樹徳科技大学の王賢徳教授からは常に暖かい励ましを賜り、風響社の石井雅社長には全面的なご助力と長い年月にわたるご寛容を賜ったこと、また京都外国語大学の佐々木伸一助教授からは、民族学関係のデータに関して有益なご助言を賜ったこと、ここに厚く感謝する次第である。
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編者紹介
石田憲司(いしだ けんじ)
1948年生。専門は明代道教史、台湾宗教社会史。主要な論文には「永楽帝の太和山復興について」(『社会文化史学』第21号 1985)、「明代道教史上の全真と正一」(『中国・台湾の宗教と文化』1992)、「台湾南部の真武神信仰について――特に清朝統治下の台南を中心として」(『東方宗教』第85号 1995)等がある。
鈴木正弘(すずき まさひろ)
1958年生。専門は唐代史、教育史及び筆記小説の研究。目録関係には「唐五代史学史関係文献目録(稿)」(『立正大学東洋史論集』6号 1993)、「『仁孝皇后勧善書』感応記事総目次――付、人名索引」(『中国筆記小説研究』1号 1997)、「『小学紺珠』総目次・索引」(『中国筆記小説研究』5号 2001)等がある。
手島一真(てじま いっしん)
1963年生。専門は南北朝・隋唐時代の仏・儒・道三教交渉史。主要な論文には「釈・道門の『威儀』――唐代僧・道官制の一考察」(『仏教史学研究』36巻2号 1993)、「中国における釈迦無尼在世年代の定立について」(『立正大学東洋史論集』8号 1995)、「Buddhism, Taoism and Mid-Tang Politics―― A Pre-Condition to the Prosperity of Buddhism during Dali 大暦 Period 」(『大崎学報』154号 1998)等がある。
浅野哲弘(あさの てつひろ)
1964年生。専門は中国法制史。主要な論文には「漢代の対諸侯王政策の一考察――左官・附益・阿党の法の制定者をめぐって」(『立正大学大学院年報』10号 1993)、「前漢武帝の徙民と『広関』――特に元狩より元鼎年間の新秦中を中心に」(木崎良平先生古稀記念論文集『世界史説苑』 1994)「後漢時代の関について――特に光武帝の関中を中心に」(吉田寅先生古稀記念『アジア史論集』 1997)等がある。
近藤吉泰(こんどう よしやす)
1972年生。立正大学大学院修士課程修了。専門は漢代の黄老思想の史的研究。
木村明史(きむら あきふみ)
1974年生。立正大学大学院博士後期課程在学中。専門は宋代社会史。主要な論文には「宋代の民間医療と巫覡観――地方官による巫覡取締の一側面」(『東方学』101号 2001)、「宋代の医薬教導――その展開と構造」(『立正大学大学院年報』18号 2001)等がある。
山元貴尚(やまもと たかひさ)
1975年生。中央大学大学院文学研究科東洋史学専攻博士後期課程在学中。専門は秦漢制度史。
池田夏樹(いけだ なつき)
1976年生。中央大学大学院文学研究科東洋史学専攻博士前期課程在学中。専門は秦漢法制史。
千葉幸司(ちば こうじ)
1976年生。中央大学大学院文学研究科東洋史学専攻博士前期課程修了。専門はモンゴル社会史。
渡邊 悠(わたなべ ゆう)
1977年生。中央大学大学院文学研究科東洋史学専攻博士前期課程在学中。専門は秦漢政治史。