03 移民inオーストラリア
移動をフィールドワーク
移民の国オーストラリアでも少数派のコプト人。エジプトのコプト派・キリスト教徒の暮らす様を通して、人の移動のあり方を考える。
著者 | 村上 優子 著 |
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ジャンル | 人類学 |
シリーズ | 京都文教大学 文化人類学ブックレット |
出版年月日 | 2009/09/30 |
ISBN | 9784894897632 |
判型・ページ数 | A5・56ページ |
定価 | 本体600円+税 |
在庫 | 在庫あり |
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目次
1 流動する世界
2 見えるもの、見えないもの
2 移民の国、オーストラリア
1 乾燥の大地
2 移民時代の始まり
3 戦争と囚人と
4 アボリジナルと入植者
5 「文明化」の試み
6 異なるものが出会う時
7 白豪主義から多文化主義へ
3 エジプト系移民「コプト人」
1 調査地アデレード
2 コプト人とは
3 コプト人移民の概要
4 故地「エジプト」
5 集う場所
6 オーストラリアにおけるコプト人
7 「見えない」人々
4 終わりに
参考文献
オーストラリアをより知りたい人のために
内容説明
移民の国オーストラリアでも少数派のコプト人。エジプトのコプト派・キリスト教徒の暮らす様を通して、人の移動のさまざまなあり方を考える。文化人類学ブックレット3巻。
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はじめに
多民族国家オーストラリアは、元から今のような姿だったわけではない。世界情勢の中で、様々に揺れ動いた結果であり、そしてまた、今なお揺れ動き続けている。入って来る人、出て行く人、不安定に揺れ動く情勢の中で、人々は各々生きて行く道を模索している。その選択肢の一つに移民がある。
オーストラリアには、コプト人のように「見えない」移民たちもいれば、ギリシア人やイタリア人、中国人のように「よく見える」移民もいる。最も古くからオーストラリアにおりながら、日常的な場面では見えにくくなってしまったアボリジナルたちもいる。そうした様々な人々が寄り集まる中で、それぞれがそれぞれに生きて行く道を模索している。
地球というかつては無限に広がるように見えておりながら、今はすっかり手狭になってしまった空間で、私たちは昔ヨーロッパ人たちが夢見たような「新世界」をあてにすることはできない。
狭くなった世界を様々な人々と共有して生きて行かなくてはならない今日、オーストラリアのケースは一つの参考になるだろう。問題がないとは言わない。今も様々な文化を背負う人々が時にぶつかり合い、時に互いにおもしろがり、時に互いに手を取りながら、試行錯誤を繰り返している。その中には悲劇もまた多く含まれている。
流動する世界の中で、いかに異なるもの同士が上手く折り合いをつけて共に生きて行くのか。それを私たちは否応なく考えなくてはならない時代に生きている。無知と誤解、思い込みからくる悲劇ほど滑稽でかつ悲しいものはない。互いが互いを適切に知ること、それは、共生への第一歩となる。
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著者紹介
村上優子(むらかみ ゆうこ)
京都文教大学人間学部文化人類学科 教務補佐。神戸学院大学非常勤講師。
著作に 「コプトの断食」『京都文教大学 人間学部研究報告』第11集(2008年)など。