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台湾民間信仰研究文献目録

台湾民間信仰研究文献目録

日本植民地時代から今日までの日本語による文献。「日本の台湾民間信仰研究」、年代順一覧、文献標題語彙索引を付す。

著者 林 美容
三尾 裕子
ジャンル 書誌・資料・写真
出版年月日 1998/03/26
ISBN 9784938718961
判型・ページ数 A5・208ページ
定価 本体3,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次



 本目録の概要

 日本の台湾民間信仰研究(三尾裕子)

 主要雑誌の書誌情報

○著者・編者別文献目録

○年代順文献一覧

○文献標題語彙索引

 著者・編者名一覧

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内容説明

日本植民地時代から今日までの日本語による文献を網羅した初の目録。道教・風水・シャマニズム、多様な信仰が渦巻く台湾の宗教世界を案内。「日本の台湾民間信仰研究」(三尾)、年代順一覧、文献標題語彙索引を付す。


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序 林美容・三尾裕子


台湾は1895年から50年間日本の植民地支配を受けた。この間、日本は台湾社会の実態把握のために、種々の調査・研究を行った。これらの研究は、もちろん植民地統治の便を図るためという目的があったものの、学問的にも水準の高い、今日でも利用価値を有するものも含まれている。また、戦後も、台湾研究において日本人の研究の中には、見るべきものが多い。しかし、これまで、文化人類学・民族学を中心とした台湾原住民研究に関しては、既に、その学問的価値が日本・台湾双方の知識人から認知されているものの、台湾漢人の研究については、日本人の貢献はいまだに充分な評価を与えられているとは言い難い。このため、日本人による、あるいは日本語を媒介とした台湾漢人の調査・研究は、戦前戦後を通じて膨大な量に上っているにもかかわらず、それらは、有効に利用されてこなかった。これらの研究の多く、特に戦前の研究は、分析的・理論的であるよりも記述的なものが多いが、資料として有用なものは少なくない。今日ではもう失われてしまった習慣や信仰などが、こうした記録の中に埋もれている場合も多々見られる。当時の時代状況を踏まえて、過去の著作に対しては批判的に検討することは必要だが、その上で今日の研究にも生かせる成果は再度光を当てられるべきであろう。そこで、本書では、日本語による台湾漢人の民間信仰に関する文献を戦前・戦後を通じて網羅的に集めて紹介し、またこれらの研究が台湾漢人社会研究全体に対して有する意義、貢献などを明らかにすることを目的としている。


本書の誕生にあたっては、以下のような経緯があった。林美容は、1992年10月より東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の客員教授として来日した際、1991年に出版した『台湾民間信仰研究書目』(台北:中央研究院民族学研究所)の増訂版作成のため、同書に含まれていなかった日本語文献の収集を始めた。92年の秋に帰国後、中文・欧文の文献も渉猟し、96年6月には、日本の交流協会歴史研究者訪問研究経費を受け、日本を1ヶ月間訪れ、三尾と共に日本語文献の収集を続けた。この時、我々は、日本人学者の過去の研究が質量共に豊富で、台湾研究に果たした役割の大きいことを痛感し、日本語単独の文献目録を作成する必要性を認識し、共同編纂を企画した。その後三尾は、97年3月に中央研究院民族学研究所によって主催された国際シンポジウム『人類学在台湾発展』に参加するため渡台した折、三週間ほどの時間を費やして台湾で所蔵されている日本語による文献の追加収集を行った。日・中・欧文全てを網羅した『台湾民間信仰研究書目(増訂本)』は、奇しくもこのシンポジウム開催中に上梓された。


以上の経過に見られるように、基本的な文献の収集作業は、林美容が行い、それのチェック及び遺漏文献の追加収集などは三尾が行った。既に述べたように、本書は『台湾民間信仰研究書目(増訂本)』から日本語文献を抜き出す形となったが、文献はかなり追加されている。また、日本語による研究の全体像により見合った形での構成を採った。すなわち、あいうえお順の著者目録を主とし、この他に索引を設けてキーワードで検索ができるよう配慮した。また、日本語による研究成果を利用者がより有効に活用できることを目指して、研究史のレビューをつけた。


収録した文献は、民間信仰にかかわるものをあまり範囲を厳密に限らず、また学問的なディシプリンを問わずに収録するようにつとめた。戦前の研究については、民俗学者、民族学者、宗教学者、法制史学者、植民地官僚等が豊富な資料を残している。戦後は、文化人類学者による研究が主流であるが、建築学者、歴史学者、民間芸能の研究者などによる研究も徐々に生まれている。日本語による著作と限ったため、同一の著者が英語や中国語で発表した論文などが抜け落ちることとなったが、逆に、日本語であれば、著者の国籍などは問わず、翻訳物も取り入れた。しかし、文献は無限とも思われるほど大量にあり、また戦前の研究については、日本でもまた台湾でも今日ではほとんど手に入らないものも少なくなく、チェック作業はかなりの困難なものがあった。おそらく、重要文献の見落とし、初歩的な錯誤等は免れ得ないであろうが、これはひとえに編者の知識や情報収集力の限界によるものである。忌憚ないご指摘、ご批判をいただければ幸いである。また、昨今の台湾研究の盛り上がりを見れば、この文献目録も数年後には必ず、追加や修正を要することとなるであろう。本書を出発点として、今後より完全な改訂版を出版していきたいと考えている。


台湾の民間信仰は台湾の湿潤性の風土を反映している(増田福太郎 1936「台湾の湿潤的風土と其の宗教」『南瀛仏教』14巻1号)。その寺廟建築や、祭祀活動及びそれと関わる民間芸能は、非常に多彩で、台湾漢人文化の主要な核となっている。またそこにおいて展開される台湾人の組織力や活動力は、台湾人の生命力を理解するのに無視することはできない。本書の提供する資料や情報を通して、より多くの人が麗しの島、台湾に研究関心を向けられることを期待している。


最後になったが、本書の文献のコンピュータ入力や編集にあたっては、文部省のCOE(Center of Excellence)高度化推進経費からの助成を受け、東京外国語大学大学院修士課程の陸●[王+韋]紅さんに担当していただいた。入力のチェックにあたっては、何人かの方にはご自身や関係者の著作について間違いや遺漏がないか確認していただいた。そして、風響社の石井雅氏は本書の意義を理解され、編者の気持ちを鼓舞して下さり、製作面の全般にあたってサポートして下さった。紙面を借りて皆様のご助力に対し、誠心から感謝を申し上げたい。


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本目録の概要


1  本書は、日本による台湾の植民地統治の開始から1997年5月31日までの日付で刊行された台湾漢人の民間信仰関係の文献を収録整理したものである。台湾漢人の民間信仰を主題とした研究文献はもとより、この分野に少しでもまとまった記述のある著作(調査報告書、書評、研究動向案内等)も、知り得た範囲でここに含めた。


2  台湾漢人の民間信仰に関わる研究を定義することは難しいが、できるだけ広くとることとした。例えば「祭祀公業」に関する研究は、宗教研究としても、法制研究としてもありうるが、宗教的な分析が含まれているものであれば、主題が法制研究であっても収録するようつとめた。また、歴史学、建築学、民間芸能、政治、経済、文学(口承伝承)などに関わる文献も同様である。しかし、主要な収録分野は文化人類学、民俗学的な文献である。


3  収録した文献は、台湾漢人に関するものに限ったため、原住民の漢化、もしくは、漢人の原住民化に関わるものは、ごく少数である。


4  日本語で書かれたものであれば、国籍、翻訳を問わずに、全て収録の対象とした。


5  専門書、雑誌論文、学位論文、研究報告、資料紹介等の他に、エッセイ、事典項目、文献目録、紀行文、写真集、総督府の出版物等も長短にかかわりなく収録した。しかし、新聞記事については、追跡調査を行う余裕がなかったので、含まれていない。


6  著者名・編者名の読みは、日本人であるか否かを問わず、全て日本語読みでとった。


7  漢字表記については、原則として当用漢字に統一した。ただし、現存する著者名・編者名に関しては、なるべく著者・編者が用いている字体を採用した。


8  可能な限り原著にあたることを原則としたが、確認できないものが若干残った。そのようなものの中に、記載が一部不完全なものがある。


9  本書は、「著者・編者別文献目録」を主編とし、さらに研究史や研究主題からの検索を目指して「年代順文献一覧」「文献標題語彙索引」および「著者・編者名一覧」を附した。

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編者紹介
林美容(Lin Mei-rong)
1952年生まれ。中央研究院民族学研究所・研究員。文化人類学専攻。
主要業績は、『台湾民間信仰研究書目』(1997年、台北:中央研究院民族学研究所)、『台湾人的社会與信仰』(1993年、台北:自立晩報文化出版部)など。
三尾裕子(みお ゆうこ)
1960年生まれ。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・助教授。
主要業績は、「中国福建省?南地区の王爺信仰の特質」『アジア・アフリカ言語文化研究』54号(1997年、東京:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)、「賭事と「神々」──台湾漢人の民間信仰における霊的存在の動態」田辺繁治編『アジアにおける宗教の再生』(1995年、京都:京都大学学術出版会)など。

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