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05 中国系移民の故郷認識

帰還体験をフィールドワーク

05 中国系移民の故郷認識

錦を飾っての帰国、再移民、循環的交流など多様で複雑な故郷とのつながり。様々な帰還の形と背景を動態的に探る。

著者 奈倉 京子
ジャンル 人類学
シリーズ 京都文教大学 文化人類学ブックレット
出版年月日 2011/03/31
ISBN 9784894897656
判型・ページ数 A5・72ページ
定価 本体700円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに
 1 地域からみるもうひとつの「中国」
 2 「帰」との対話
 3 帰国華僑について
 4 問題意識の所在、フィールドワーク

Ⅰ 帰国華僑聨合会と「帰国華僑の家」

Ⅱ 「帰国華僑の家」の組織と活動
 1 インドネシア帰国華僑聯誼会
  (1) 組織と活動
  (2) 非帰国華僑との関係
  (3) 「インドネシア」の共有
  (4) 若い世代への継承の問題
 2 帰国華僑聯誼会の会報

Ⅲ 帰国華僑の経験と記憶
 1 「愛国」に含まれる意味
 2 故郷認識

おわりに

  参考文献

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内容説明

 

華僑・華人として海外進出ばかりが注目される中国系移民だが、錦を飾っての帰国、再移民、循環的交流など故郷とのつながりは多様で複雑だ。様々な帰還の形と背景を動態的に探る。

 

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「はじめに」より

3 帰国華僑について

華僑の「僑」とは一時滞在の意味である。つまり、華僑とは、海外に仮住まいする中国人、中国国籍を持つ在外中国人のことである。現地の国籍を取得した二世や三世は華人と呼ぶ。中国人の海外移住は、三つの時期に分けて考えることができる。端緒期は、対外貿易の発展した八~九世紀の唐代であり、展開期は一六世紀の明代である。大量流出期は、清朝も混乱期に向かう一九世紀以降にやってきた。一八一九年、イギリス東インド会社の植民地行政官であったラッフルズによってシンガポールの開発が始まり、労働力として中国人が東南アジア地域に流入するようになった。更に一八四二年、アヘン戦争の敗北で南京条約を結んだ中国が開国したことによって、中国人の大量流出が本格化した。彼ら彼女らが移住先国でどのように適応してきたかということについて多くの研究成果が出されている。他方で、海外に移住した中国人の中にはその後、帰国した者もいた。

帰国華僑とは文字通り帰ってきた華僑(個人、集団の両方を指す)のことだが、早くは清朝末期に政府の要請を受けて東南アジアから帰国した知識人の辜鴻銘、李登輝、伍連徳なども広義の帰国華僑ということになろう[黄 二〇〇六]。本書では、主に新中国誕生前後の一九四〇年代から一九七〇年代に東南アジアから帰国した華僑を対象とする。この時期の帰国華僑は帰国の理由から大きく二つのタイプに分けることができる。……

 

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奈倉京子(NAGURA, Kyoko)

1977生まれ。主な研究業績に、『「故郷」与「他郷」─広東帰僑的多元社区、文化適応』(北京社会科学院文献出版社、2010年)、「過渡的居場所としての『ベトナム帰国華僑』」(2007年度日本華僑華人学会研究奨励賞受賞論文、『華僑華人研究』第4号、pp. 17─41、2007年)、「日本からの中国帰国留学生の自己実現と『制約』に関する事例的考察」(『中国研究月報』中国研究所、pp. 1─19、2009年)、論文「中国人留学生の文化的経験」(『中国21』愛知大学現代中国学会、pp. 1─18、2010年)等がある。

 

 

 

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