目次
本目録の概要
著者・編者別文献目録
族別文献目録
西暦・年号対照表
著者名・編者名検索表
内容説明
アミ・タイヤル・平埔など台湾原住諸族に関する文献を網羅。文化人類学・言語学を中心に、戦後の業績を一望にする待望のツール。著者別分類の本編に各族別分類を付す。『台湾原住民研究』別冊シリーズの1。
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刊行にあたって
笠原政治
第二次大戦後およそ半世紀の間に、台湾原住民の研究は、幾多の曲折を経ながらも着実な歩みをかさねてきた。ここ五十年来、著書や論文として公表されてきた研究文献は、書かれた言語や専門分野を問わずに数えればすでに膨大な分量に達していることであろう。もとよりそれらの多くは地元台湾の研究者による学術活動の成果であるが、他方で、日本における研究もまたこの期間にかなりの進展を示し、現在では内外の評価に十分たえられるだけの水準に至っているものと考えられる。しかし、これまで日本における台湾原住民関係の文献は、発表・出版の複雑な事情や、研究者の分散、諸分野間での情報流通の不徹底など、さまざまな条件に制約されて、目録やその他のわかりやすい形式で整理・編纂されることがほとんどなかった。極端な言い方をすれば、一線にいる現役の研究者でさえ所在を知らない文献があまりにも多いというのが、偽らざる研究現場の実状ではないだろうか。本書は、誰もが感じているそのような風通しの悪さを改善するために、台湾原住民に関する戦後五十年余の研究文献を可能な範囲で確認し、それらを著者別の一覧表にまとめてみたものである。この文献目録の出版によって、今までの研究上の不便さが少しでも解消されることを期待したい。
本書の書名にある「日本の」という限定は、できるだけ緩やかな意味で受け取っていただきたいと思う。日本国籍を有する研究者、あるいは日本人研究者による著書・論文などをまず初めに選び出したのは当然のことであるが、その他に、執筆者が誰であるかにかかわりなく日本語で書かれた著作であれば、それらもここには同じように含められている。また、日本国内で発表された研究という基準だけで、他に条件をつけずにこの目録に載せている場合もある。台湾原住民の研究には、研究者の国籍、使用言語、著作の発表・出版地などに関してはなはだ錯綜した一面があり、そうした研究状況で、もし何らかの厳格な選択基準を設けたならば、結果的に文献目録としての使いやすさが減じることになるだろうと判断したわけである。
それ以外の細かい事項については別に記した「本目録の概要」を見ていただければよいが、もう1つだけここで述べておきたいのは、この目録が文化人類学(ないしは社会人類学、民族学)と言語学の研究文献を中心に編集されている、という点である。歴史学、考古学、形質人類学、地理学、政治学、文学などの分野で公表された著作、あるいはノンフィクション、小説、紀行文、評論、写真集なども目についた範囲では拾い上げてあるが、それらは決して系統的に調べたものではない。言うまでもなく、その2分野を中心にしたのは、編者の知識と情報収集力に限度があるためである。他分野の網羅的な文献目録が、別にしかるべき研究者の手で作成されることを期待したいと思う。
台湾原住民に関する研究文献の目録は、本書と主旨の違うものがすでに何編かまとめられている。たとえば、戦前から戦後の一時期までに日本語で書かれた文献の目録として、吉原弥生(編)「日文書刊所載有関台湾土著論文目録(一)」(『国立台湾大学考古人類学刊』29・30期、1967)はきわめて詳細で、学術上の評価も高い。また、戦後の台湾における研究動向を知る上では、陳其南(編)「光復後高山族社会文化人類学文献目録」(『中央研究院民族学研究所集刊』40期、1975)、黄應貴(主編)『光復以来台湾地区出版人類学論著目録』(中国民族学会・漢学研究資料服務中心、1983)、平埔族研究については、荘英章(主編)『台湾平埔族研究書目彙編』(中央研究院民族学研究所、1988)が、それぞれ研究者必携の文献目録である。本書は、それらの目録や、末成道男(編)『中国文化人類学文献解題』(東京大学出版会、1995)などと併せて利用されることが望ましいであろう。
あらためて考えると、雑多な刊行物の中から台湾原住民に関係する文献を捜し出し、1冊の目録に編集していくという作業は、まるで泳ぎ回る魚群を狭い袋網の中へ追い込む漁法のように思えてくる。日本順益台湾原住民研究会の会員諸氏からはそれぞれご自分の著作や関連する文献リストの提供があったので、それだけでかなりの分を確認することはできた。しかし、それ以外の文献を捜すためには、とにかく手探りで進み、1点1点を網にかけていくというほかに適当な方法はないのである。そのような、いわば手作りで出来上がった目録であるから、本書の中には思わぬ初歩的な誤りや重要な文献の見落としが見つかるかもしれない。率直なご指摘、ご教示をいただければ幸いである。また、次第に活発化の兆しが見えはじめてきた昨今の台湾原住民研究の状況から考えると、おそらく何年か先に、この目録にはかならずや追加・修正の必要が出てくることになるであろう。目録名の後に「1945-1996」と文献の発表年を区切って表示したのは、そのような事態に対処し、続けて改訂版を出していけるようにとの配慮からである。
本目録の作成にあたって、日本順益台湾原住民研究会の会員諸氏からは多大なご協力を得た。また会員外では、アメリカ在住の金子エリカ先生が、編者の求めに応じて欧文文献のリストを送ってくださった。複雑きわまりない文献名のコンピュータ入力は会員の宮岡真央子さんにお願いした。そして、編集指導から出版まで終始ご支援を惜しまれなかったのは風響社社主の石井雅氏である。皆様の暖かいご助力に対して深く感謝申し上げたい。
本目録の概要
1 本書は、1945年8月16日から1996年12月31日までの日付けで刊行された台湾原住民関係の単行本、論文、調査報告書、書評などを著者・編者別に配列して示した文献目録である。台湾原住民を主題にした研究文献はもとより、台湾原住民について少しでもまとまった記述のある著作も、知りえた範囲でここに含めた。
2 日本国籍を有する(有した)研究者の著作、日本語で書かれた著作、日本国内で発表された著作、の3点のうち、いずれか1つの基準を満たしている文献は、原則としてすべて記載の対象にした。3つの基準の組合わせについては、できるだけ緩やかに判断することとした。
3 文化人類学(社会人類学、民族学、その他の関連する分野名称を含む)および言語学の文献に関しては網羅的な目録の作成を目標とし、それ以外の歴史学、民俗学、考古学、形質人類学、地理学、社会学、宗教学、政治学、経済学、建築学、文学・芸術、教育史などの分野については部分的な記載にとどめた。
4 専門性の高い著書、論文、学位論文、研究報告、資料紹介等の他に、エッセイ、書評、研究紹介・解説、随想、事典・辞典項目、文献目録なども長短にかかわりなく収録した。また、ノンフィクション、小説、伝記・人物紹介、紀行文、口述記録、評論、写真集、展示カタログなども一部に含めておいた。
5 論文等の中で、後に著作集、論文集などの単行本に再録されたものについては、重複して掲げた場合と、どちらか一方だけを掲げた場合がある。
6 新聞、週刊誌などに掲載された短報、研究紹介、書評等は、日本順益台湾原住民研究会の会員から自己申告のあったもの以外は確認していない。
7 1945年8月15日以前の刊行文献が戦後に復刻・再刊されている場合は、復刻版であることを明記した上、主要なものに限って記載した。ただし、入手が著しく困難と判断される刊行物は原則として除外した。
8 日本語に翻訳された外国語文献は訳者名を付して記載したが、日本語等から外国語(主に中国語)に翻訳されたものについては、日本順益台湾原住民研究会会員の著作など、一部に限ることとした。
9 複数の著者・編者がいる場合には、原則として印刷されている順序で全員の氏名を記し、著者・編者名は/印で区切った。また、そのような文献については、著者・編者名の順序を入れかえ、\印で区切って全著者・編者の該当する箇所に重複記載した。
10 漢族関係の文献は、台湾原住民と関連が深いものだけを含めた。
11 各文献の発行所、発行地・出版地のうち、たとえば『民族学研究』『えとのす』のように、それらを明示する必要がないと判断できるものについては、記載を省略した。また、大学等の紀要名などに研究機関名が含まれている場合も、重複を避けた。
12 雑誌などに分載・連載された論文等に関しては、それぞれ該当するものを独立した文献として扱った場合と、一括して記載した場合がある。
13 文献は著者名のアルファベット順、さらに著者別の発表年順に配列した。
14 他の目録類から文献名をここに転用し、原著を確認できていないものの中には、一部にページ、発行所などの記載が抜けている場合がある。
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編者紹介
笠原政治(かさはら まさはる)
1948年、静岡県生まれ。
1978年、東京都立大学大学院社会科学研究科社会人類学専攻博士課程単位取得退学。
現在、横浜国立大学教育学部教授。
主たる調査地は、台湾、沖縄で、最近は台湾原住民族を中心にして、歴史の表象を主題にした人類学研究に取り組んでいる。
編著書・訳書に、『台湾原住民族映像』(編、南天書局、1995年)、『アジア読本・台湾』(共編、河出書房新社、1995年)『親族集団と社会構造』(R・M・キージング著、共訳、未来社、1982年)、『家族と親族』(共訳、未来社、1992年)がある。
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